福岡はサラリーマンのブラックホール?

昨年、福岡市で「福岡はサラリーマンのブラックホール」という言葉が話題になったことがありました。地元の福岡大好きの人たちが、「福岡に転勤してきたサラリーマンは、全員と言ってよい程福岡が大好きになる。福岡は、サラリーマンを引き付けるブラックホールのような町である」という趣旨で言った言葉のようです。しかし、これについて東京から転勤してきたサラリーマンを入れて話題にすると、彼らは話に加わらない、というようなことが書かれた新聞記事もありました。

私は、福岡在住10年ですが、サラリーマン生活のほとんどを東京で過ごしました。その経験から言うと、「福岡はサラリーマンのブラックホール」という言葉は、少なくとも東京の大企業から転勤してきているサラリーマンには当てはまらないと思います。それは、東京の大企業のサラリーマンにとって、福岡転勤はうれしい出来事ではないからです。東京に本社がある大企業は、役員(取締役や執行役員)の大部分は東京勤務です。地方で支店長が役員なのは、大阪支店長(専務取締役または常務執行役員)か名古屋支店長(常務執行役員または執行役員)くらいではないでしょうか。福岡支店長が取締役や執行役員というところは先ずないと思います。福岡(九州)は、マーケットの規模が小さいのです。それでも福岡は、人口約150万人を誇る九州の拠点都市であり、福岡支店長は、世間的には聞こえも良いことから、役員になれない支店長の上がりのポストとなっているような印象があります。サラリーマンの場合、役員の目に留まらないと出世できませんから、役員になれない支店長の元で働く次長や課長はつらい所があります。従って、課長以上の役職者にとっては、ほろ苦い転勤生活だと思います。また30代の中堅クラスにとっては、将来の出世のためには福岡はなるべく早めに切り上げて、東京勤務に復帰したいという気持ちが強いと思います。従って、福岡が好きでたまらない、という気持ちとは違うと思います。20代の若手には楽しいところかもしれません。やはりサラリーマンのブラックホールは東京です。

私は熊本出身ですが、熊本の周辺市町に行って福岡に来ると、若者が福岡に吸い上げられていることを実感します。周辺市町には若者の姿は少なく高齢者が目立ちますが、天神に来ると若者だらけです。九州の福岡市以外の若者が福岡に吸い上げられ、それが天神に溢れているように感じます。最近の国勢調査の結果でも、福岡の人口流入の6割は九州内からとのことです。ここから、「福岡は九州の若者のブラックホール」となっていることは間違いないと思います。