移住の最大の障害は同化を求めること
今後日本の人口は大きく減少し、田舎では消滅する集落も多数出てくる予想です。人口減少に悩む自治体は、その対策の1つとして都会などからの移住を促進しています。そこで気になるのが、その自治体の多くが移住者に地域に同化することを期待していることです。私は、都会の人たちが地方に移住するのをためらう最大の要因は、移住する地方の習慣・文化、人間関係などを受け入れること、即ち同化することを求められることだと思います。都会生活は、多くの異なる習慣・文化をもった人たちが、適度な距離感を保って生活することでなり立ています。隣の家と交流がないことも普通にあります。そこから地方に移住して、当地の習慣・文化、濃厚な人間関係などに同化するのはなかなか難しいものです。移住者が多い東京都の小笠原諸島父島をテレビが取り上げていましたが、40代の移住者の女性は「ここはいろんなところから移住してきているから、ここのやり方に染まることを求められないのがいい。いまさらやり方は変えられない。」と言っていました。その通りだと思います。田舎の年老いた父母が都会にいる息子たちから都会に来て一緒に生活するよう言われても行かないのは、一緒に住むのが窮屈なのとともに、いまさら都会のやり方に変えられないからでしょう。なのに、田舎への移住者には、移住して来たからにはここのやり方に従うよう求めます。移住するなら、そういうことが求められない分田舎から都会に移住する方が本当は容易です。
移住者に同化を求めれば、時間が経てば地域はまた同質者の集まりになり、元の木阿弥です。移住者には、同化を求めず、今までのやり方を受け入れた方がいいと思います。そうすれば、都会などの生活で身に着けた技術やノウハウを生かし、地域を活性化してくれる人が現れます。そして、移住者が移住者を呼ぶ好循環が回り始めます。
移住者を求める自治体は、移住者に地域に同化することを求めるのではなく、移住者と一緒に新しいコミュニティを作る覚悟が必要ではないでしょうか。