九州には科学技術系VBが興る知的基盤が足りない

日本は今後人口減少が進むことが予想され、50年後には今の約1億2000万人から9000万人を切るレベルになると言います。この予想は主に出生数と死亡数の予想を基に計算されていますが、地域間では、加えて人口の大移動が起きることを考えておく必要があります。人口の東名阪(東京・名古屋・大阪)への集中が進むと思われます。この3地区は、鉄道を中心とした交通インフラが充実し、大学の数も多く、生活基盤が充実しています。それになにより雇用の受け皿が豊富です。この結果、先ずは雇用を求めて人が移動し、その後生活基盤に惹かれて人が移動します。その結果、企業の立地もこの周辺に集中します。これにより、これ以外の地方の人口減少のスピードは、今の予測より早くなると思われます。これらの地方の中でも、その中核となる都市(札幌、仙台、金沢、広島、福岡)などは、一定の都市規模を確保することが予想されますが、これはエリア内からの人口流入によるものです。

私は今福岡に住んでいますんで、九州について考えると、どこかの時点で九州が人口減少から反転増加に転じるには、雇用の受け皿である事業所を増やすしかありません。大企業の事業所については、今後は人口が集中する東名阪への立地が進むと思われます。そうなると、自らの地域で起業を盛んにし、事業所を増やしていくしかありません。

いまでもいくつかの施策がやられていますが、九州には今後期待される科学技術系ベンチャー企業(VB)が興る知的基盤が不足していると思われます。今後の科学技術系VBの分野は、AIや生命科学など高度な知識や知能が求められる分野です。そうなると、高度な学力を持つ人材が必要になり、東大や京大出身者が活躍するようになると思われます。多分、科学技術系VBで成功できるのは、東大、京大、東工大、早稲田、慶応までの学力を有する者ではないでしょうか。九州のトップである九大は、偏差値で見ると全国10位前後です。10位と言えば、プロゴルフの試合で言えば、誰も名前を知らない状況です。九大の学力を企業の物差しで上中下で評価すると、中の上という評価だと思います。上には入りません。企業などにおいては、頭を使う部署の要員としては期待されていません。役員になれる人も少ないですし、中間管理職要員だと思います。

今後九州で科学技術系VBが興り雇用の受け皿を大きくするためには、九州に東大並みとは言いませんが京大並みの学力を有する大学または研究機関が必要となります。新たに作るのは現実的でなく、九大のレベルを高めることが現実的かと思います。その方法は2つあります。

1つは、九大の入試を国立大学の5教科7科目型から私立大学の3教科型に変えることです。国立型の入試をやっている限り、偏差値10位前後の学生しか集まりません。東大の学生は、100点の風景を知っていますし、京大の学生は95点の風景を知っています。慶応や早稲田の学生は、3科目だけなら95点の風景を知っています。彼らは、その風景を以てゴールとします。一方九大の学生は、85点の風景を見ていると思います。その結果、85点の結果で良しとすることになります。これでは、正解にたどり着けないし、ブレークスルーは望めません。新しい科学技術を使ったVBはブレークスルーからしか生まれません。九大が3科目型の入試を採用すれば、3科目なら95点の風景が見える学生を入学させられます。今よりぐっと学力水準があがります。

2番目は、九大の理系入学者の成績上位10%を入学金・授業料無料の特待生とし、更に給付型奨学金10万円を支給し、勉学・研究に集中させます。この結果、優秀だけれど経済的事情で東大や京大にいけない学生を集められます。今でも九大入学者の上位20%は京大にも合格できるような学生だと思いますが、これによりさらに優秀な学生を集められます。彼らを将来の科学技術のリーダーとなるべく集中的に教育し、知的水準のけん引役とします。その原資は、先ずは福岡県と福岡市で負担します。近い将来九州各県の国立大学を九州国立大学運営機構の基に統合し、九州全体を引っ張る人材育成費用として九州全県で分担するのが望ましいと思います。

こういうことをやらない限り、九州の人口の反転増加はなく、九州は日本の離島の1つの位置付けになると思います。