熊本県・市は復興予算バブル?
熊本県は熊本市出身の漫画家尾田栄一郎氏の人気漫画「ワンピース」の主人公ルフィの銅像を1300万円かけて熊本県庁のプロムナードに造る計画を発表したという報道です。これに対してネット上では疑問が噴出しているようです。疑問の1つは、「なんで県庁の敷地に造るの」ということです。熊本県庁は、町の中心部から少し離れており、一般の人は行きません。多くの人に見てほしいなら、もっと人が集まる場所に造るべき、というものです。もっともだと思います。県がこの疑問に即座に答えられないとすれば、企画は御粗末としか言いようがありません。ではなぜ県庁敷地に造るということになっているのでしょうか?想像するに、他の場所では、多くの利害関係者との調整が必要で、設置場所の決定に時間がかかり、速やか予算が執行できないからではないでしょうか。上通り・下通りのアーケード街に置くとしても、具体的にどことなるとなかなか決まらないと思われます。設置する土地の賃借料の問題も発生するかも知れません。熊本城内は、復興工事のため当面設置できません。JR熊本駅も再開発を控え簡単に設置できる状況にありません。その点、県庁敷地内ならすぐ設置できるのです。その結果、予算を速やかに執行できます。県庁の敷地内となったとする理由はこれしか考えられません。当たっているとすれば、熊本を変える可能性を秘めた「創造的復興」の評価を貶めることになります。そもそも尾田氏は熊本市出身であり、熊本城復興支援で有名ですから、熊本市が主体となってこのプランを進めれば、こんなおかしな設置場所にはならないと思います。設置主体の変更が必要ではないでしょうか?
疑問の2つ目は、そんなお金があるのなら、このお金を復興者支援に使うべきではないか、というものです。当然出てくる意見です。問題はこのお金の出どころですが、被災者支援に使える予算ではないと思われます。国の何らかの復興予算に潜らせるつもりではないでしょうか。それも速やかに消化する必要がある予算です。
熊本市でも呆れるお金の使い方がありました。熊本市は、2016年11月熊本城復興のためと称し、復興城主の募集を開始し、私も1口申し込みました。その後暫くして、復興城主証が送られて来たのですが、まず驚いたのは、送られてきた封筒が角形1号という大形の封筒だったことです。これだと郵便受けに入らないため、郵便配達員がドアまで届けてくれました。中を見てまた驚きました。色付きの高級そうな厚手の1枚用紙を各ページB4用紙くらいの3枚折にし、その中の1枚にA4の用紙に印刷した市長名の復興城主証が2か所の隅を差し込むようにして取り付けてありました。このために高級な厚手の用紙および角形1号の大型封筒が必要だったようです。この封筒だと不定形郵便物になるため郵便料金が高くなります。また、中の色付きの高級そうな厚手の用紙も値が張ったと思われます。復興城主証1枚を印刷し郵送するのに、300円以上かかっているのではないでしょうか。復興城主には10万人程度が申し込んでいるでしょうから、3000万円以上のお金を復興城主証にかけていることになります。これだけあれば熊本城のちょっとした施設の復旧費用になります。復興城主に申し込んだ人は、寄付したお金を全額復興資金に使ってほしいわけで、こんな使われ方をするとは夢にも思っていなかったと思います。復興城主証は、社内のB5の印刷用紙に、コピーすれば十分だったのです。なぜこんなことになったか?これは担当部署の仕事をしているというアピールだと思われます。だれへのアピールか?市長へのアピールです。私はこんなに仕事をしていますよ、復興城主証は市長名で出すことを考えて高級感を出しました、というアピールです。貰う方にとっては、市長名の書面なんて何の意味もありませんし、こんな大きな様式で貰っても、仕舞う場所に困ります。本来市長は、この復興城主証案が挙がってきたとき、こんな無駄遣いはするな、もっと安いものでよい、と突っ返すべきでした。それがなされなかったことが本件の一番の問題点です。熊本市役所はとんでもないヒラメ社会だということが分かります。私はこれで熊本城復興のたの寄付をする気が失せました。
ルフィ像の件は、熊本県庁もコストパフォーマンスを考えない組織であることが伺えます。ともかくお金を使わないと仕事した実績にならないからやる、知事になんとかアピールしたいという気持ちが先立っているように感じます。尾田氏以外にも多額の寄付をし、復興に貢献した人もいると思いますが、そういう方にはどうするのでしょうか?寄付者は、「何もいらないからともかく有効に使ってくれ」と言う気持ちだと思います。しかし、ルフィ像の件で、寄付したお金が本当に有効に使われているのか疑念に思い始めた人も多いと思います。
なぜ被災県熊本でこのようなことが起きるのでしょうか?一般に被災県は、復興費用としてお金がかかり、資金不足に直面しているのではと考えがちですが、実際は逆のようです。国から復興費用が潤沢に流れ込み、それの消化に悩まされているのが現実のようです。例えば、熊本城の敷地は、国有地で国の史跡になっていることから、熊本城や石垣など熊本城の復興は、国土交通省や文化庁が復興主体となり、殆ど国の費用で行われます。熊本市は国に代わり管理を行っているだけであり、熊本城の復興費用の負担は、殆どかかってこないのです。復興城主に申し込んだ人は、自分が寄付したお金は、熊本城や石垣の復元費用に使われるものと思っていると思いますが、それに間違いです。私たちが寄付したお金は、熊本城復興関連の予備費です。
今熊本県や熊本市は、国から流れてきた復興予算をどうやって消化するかで頭が一杯のようです。ルフィ像の設置がこの復興予算の消化のために考えられたものでないことを願うばかりです。熊本県や熊本市の乱暴なお金の使い方を見ると、熊本に未来はないと思えてきます。