森友問題、大阪地検は検察審査会に期待!?
森友問題は、5月31日大阪地検特捜部が不起訴と発表し、検察としては刑事事件としては取り上げないこととなりました。理由として、まず背任罪については、地中にごみがあったのは事実であり、撤去費も過大とまでは言えず、故意に国に損害を与えようとしたと判断することはできないとし、虚偽公文書作成罪については、契約方法や金額など契約の根幹にかかわる部分の書き換えや虚偽の記載はなく、起訴するようなレベルには達していないと判断したということです
しかし、背任罪はともかく、虚偽公文書作成罪については、判断に疑問があります。虚偽公文書作成罪の保護法益は、公文書の信頼性の確保であり、これを著しく棄損したことは否めません。虚偽公文書作成罪については、検察としても起訴しないのは困難と考えていたと思います。それは、検察の不起訴発表までの政府・財務省の対応を見れば分かります。3月初めに森友の土地売買に関する決裁書が改ざんされている疑いが報道されてから、ほどなく改ざんを認める形で佐川元理財局長が辞任しました。それから改ざん前の決裁書と改ざん後の決裁書が国会に提出されました。これで終わりかと思っていたら、廃棄したと主張していた膨大な森友の交渉記録も国会に提出されました。これが5月23日です。そして大阪地検から不起訴が発表されたのが5月31日です。これを見れば、ある筋書きに従って事が進んでいることが分かります。すなわち森友事件の処理を巡り、政府と検察庁で厳しい交渉が行われ、合意が成立したことが伺われます。政府としては、安倍首相を守ろうとしてやった佐川局長らの起訴を何としても阻止したい、検察庁としては、捜査で押収した交渉記録や改ざんした決裁書があり、背任罪はともかく虚偽公文書作成罪による起訴は避けられないと主張したと思われます。この交渉は、官邸事務方の官房副長官、検察現場トップの検事総長および法務省事務方トップの法務事務次官が中心となったと思われます。その議論の結果を官房長官および法務大臣に挙げて、落としどころを探ったと思われます。その結果、本来虚偽公文書作成罪での起訴は避けられないが、政府で起訴されたのと同様のことを行えば、不起訴で処理する、との妥協が図られたと思われます。起訴したのと同様のこととは、起訴された場合に検察から裁判で証拠として提出される書類の公表と責任者の処分です。その結果、改ざんされた決裁書および交渉記録が公表され、佐川元局長が辞任することになったのです。ここまで政府・財務省が譲歩したということは、検察側は、これに応じなければ虚偽公文書作成罪で起訴する意思を強く打ち出していたということです。従って、虚偽公文書作成罪については、本来なら起訴でした。検察としては、起訴できなかったことは不本意ながら、起訴と同等の効果を出せたとして、検察の使命は一応果たしたという思いではないでしょうか。そして、検察側が密かに期待しているのは、本件不起訴処分が検察審査会で不起訴不当と判断され、最終的には強制起訴されることだと思います。
尚、6月4日、財務省は改ざんに関わった佐川元局長以下20名の職員の処分を発表しました。これに対して、市民団体は、大阪地検特捜部の不起訴の判断は不当であるとして、検察審査会へ審査を申し立てました。検察審査会への申し立ては、官邸・財務省および検察も想定しており、検察審査会対策としての職員処分であったと思われます。そうでなければ、ここまでしません。検察側から官邸・財務省に対して、「検察が不起訴にしても、検察審査会で強制起訴になる可能性が高いですよ。改ざんに関わった職員を処分して、改悛の態度を示しておいた方がいいですよ」とアドバイス(脅し?)されたのでしょう。検察は、「検察が起訴するぞ」と「検察審査会で強制起訴されるぞ」の2つで、官邸および財務省を追い込み、森友問題の交渉内容と決裁書改ざん内容の公表および責任者の処分まで追い込んだのでしょう。今回は、検察の政治力が目立ったように思います。しかし、検察の今回の処分は、本来なら虚偽公文書作成罪で起訴のところを不起訴にしたのですから、森友問題と同じ構造です。近畿財務局に相当するのが大阪地検(特捜部)で、財務省理財局に相当するのが法務省検察庁本庁です。さて検察庁本庁で佐川元局長に相当するのは誰だったのでしょうか。いずれにしても今回の不起訴は、検察庁の森友事件として語り継がれることになると思います。