定年延長、厄介者扱いは必至
2025年から雇用義務が65歳に延長される(定年延長)ということで、大企業などでは実施計画を発表するところが出てきました。公務員なら給料は税金なのでなんら問題なく実施されるでしょうが、民間企業の場合、給料は利益が原資なので、様々な問題が噴き出ることが予想されます。
まず、会社としては稼がないと存続できませんので、いらない人をなぜ雇い続けるのという疑問が常に残り続けます。通常大企業では55歳が役職定年となっており、役職を解かれ、実質平社員の給与待遇になります。ただし、いきなり役職がなくなると寂しいだろうということで、名目的にそれまでの役職名(部長や課長)を付けていることが多いかと思います。それから子会社や関連会社へ出向し、大企業本体から姿を消しています。業績が良い会社の中には、退職割増金を付ける、あるいは収入が落ちた場合は補填することを約束して他社への転職を図っている場合も見られます。業績が良くない会社の場合は、自発的にやめるよう陰に日に迫ります。また、居づらくして退社するように仕向けます。
要するに多くの場合、定年退職者は、会社運営には不要なのです。それを国が年金負担を減らすため、定年を65歳に伸ばすということが無理筋なのです。今後どういうことが起きるかと言うと、業績の良い会社は、65歳までの給与全額を払うから、会社には来ないでよい、という制度を導入すると思いまます。ようするに戦力としては期待していないし、来られると職場の雰囲気を害するから来ないで、あなたは給料が貰えればいいでしょう、というわけです。しかし、業績の悪会社はこうはいきません。陰に日に雇用を延長しないように迫るでしょうし、雇用延長に厳しい基準を設けると思います。今は景気が良く、多くの企業で人手不足だからいいですが、問題は景気が悪くなったときです。当然コスト削減が必要になるわけで、特に人員削減は欠かせません。その場合に定年延長者については、真っ先に雇用を打ち切ります。業績が悪化したから仕方ないだろうというわけです。このように国の年金財政を理由にした定年延長制度は、企業経営と相入れないため、どこかで破綻を来すと思われます。
日本人の平均寿命は80歳を超えていますが、旅行や登山、スポーツなど体力が必要なことができる健康寿命は70歳くらいまでです。70歳を超えたら、体力がぐっと落ち、やれることが限られてきます。従って、65歳まで会社で働いたら、本当に好きなことができる期間は5年くらいしかなく、あっという間です。たぶん後悔すると思います。
このように、65歳までの定年延長は、本人および会社の両者にとって良いことではありません。若い人たちとしては、50歳を自己定年と設定し、それまでにその後の生活資金を確保するような人生設計をする必要があると思います。会社から必要とされ、自分も働きたければそのまま働けばよいし、そうでなければ第二の人生を始めます。会社としてもそのような賃金制度を設計する必要があると思います。