子会社群剰余金1100億円のNHKは立派な民間企業
NHKの子会社・関連会社(子会社群)について知っている人は少ないと思います。私もある雑誌で見て驚きました。NHKは13の子会社と2つの関連会社を持っています。2017年3月期で見るとその売上高は約2,600億円、経常利益は約110億円あります。全社黒字で、内部留保はなんと約1,100億円あります。一番売上高の大きいのはNHKエンタープライズで551億円、次がNHKメディアテクノロジーで333億円と中堅企業並みの売上高を誇ります。NHK子会社群の売上高の大部分はNHKからと思われますから、受信料の振り替えです。NHKは受信料収入と支出の差を収支差金と言って利益とは言っていませんが、実質利益である収支差金が大きくならないよう子会社群を使って調整していると思われます。この子会社群の業容は民放キー局並みであり、NHKの肥大化の実態を示しています。
NHKは1950年制定の放送法に基づき設立され、その当時民放がまだなかったことから、民放的役割も担って出発しました。その後民放各社ができ、NHKは本来なら公共放送に特化すべきでしたがこれをせず、民放を併せ持つ公共放送として業容を拡大してきました。そして民放部門の費用も受信料を充てたため、受信料は概ね月2,230円まで拡大し、年間受信料収入は約7,000億円となっています。これは民放トップの日テレの倍以上のであり、民放キー局5社の売上総額に近い金額です。
この巨大な受信料収入を可能にしているのが戦後すぐに制定された放送法です。放送法64条は、受信設備を設置したらNHKと受信契約を結ばなければならないと規定し、見る見ないにかかわらず受信契約の締結を強制しています。これを憲法の最高原理である個人の意思の尊厳を踏みにじるものであり、近代国家では許されないことです。見る見ないにかかわらず受信料を払えということは、受信料は契約に基づく対価ではなく公共放送負担金、すなわちNHK税であると言うことです。ならば所得に応じて負担するのが税の原則です。これを受信契約に基づくと対価と偽装することにより、所得に関わらず全世帯一律の負担とし、低所得世帯にとっては大変重い負担となっています。現在受信料の不払い世帯が契約世帯の約20%、約900万世帯あると言いますが、これは不届き者で払わないのではなく、生活が苦しく払えないのです。NHKは住民税非課税世帯からも容赦なく受信料を取り立てています。住民税非課税と言えば、生活するために必要な所得以下であることから住民税を徴収できない世帯です。それでも徴収するNHK受信料は、一体何なのでしょうか?この世帯は食費を削ってNHK受信料を払っているか不払い世帯に入っていると思います。これは不条理としか言いようがありません。この根拠となる放送法は、日本の戦前の不条理思想を引きずる法律です。この法律がいまだ改正されないということは、日本は戦前の不条理思想を払拭できていないことを示しています。
最高裁は昨年12月の判決で、受信契約の締結義務を定める放送法64条は立法府の裁量の範囲を逸脱しているとは言えず、違憲とは言えないという判決を出しました。これを持ってNHKは受信料徴収の根拠が確立されたと言っていますが、最高裁の言わんとするところは、「疑義はあるが、立法で解決する問題であり、司法が違憲と判断することはできない。」という趣旨です。最高裁は、ここで違憲判決をだせばNHKは受信料を徴収できなくなり、放送できなくなることを危惧したものと思えます。この判決で、違憲の疑いがあるので立法府で対処するよう意見を付ける裁判官が1人もいなかったことは、最高裁裁判官に対する信頼を大きく低下させる結果となったと思います。。
こうなった以上NHK受信料不払い者とNHK受信料に不満を持つ者としては、国会で放送法改正を実現するしかありません。現在自民党も野党も放送法改正を公約に掲げていません。NHKは多くの国会議員の子弟や関係者を職員にして、国会議員を傭兵化しているのです。従って、このまま待っていても放送法が改正されることはないと思われます。そうと分かれば、放送法改正を願うものとしては、次の総選挙で放送法改正を公約とする新しい政党に投票し、できるだけたくさんの国会議員を国会に送り込むしかありません。獲得可能な票数は、NHK不払い者の有権者が約1300万人(不払い世帯の有権者を1.5人として計算)、受信料は払っているが不満を持っている有権者が700万人として2,000万票あります。これだけあれば衆議院比例区で100人の議員を誕生させられます。それと同時に小選挙で放送法改正に反対する議員を落とすことができます。そうなれば放送法改正を実現できます。
尚、放送法改正は同時にNHK制度改革を伴います。先ずNHKを放送内容に応じ、持ち株会社のもとに公共放送会社と民間放送会社に分割します。現在の放送内容からすると公共放送2、民間放送会社8の割合となります。公共放送会社には国から約1,500億円で公共放送を委託します。国はこの費用を所得のある国民(世帯ではない)から所得に応じ公共放送負担金(税金)として徴収します。対象を6,000万人とすると平均1人年間2,500円となります。もちろん住民税非課税世帯は払う必要がありません。これは目的税で、そっくりそのままNHKに渡され、政府により減額されることはありません。NHKは税負担にすると政府から放送内容に介入される恐れがあると言っているようですが、公共放送は事実の放送であるため、介入のしようがないと思われます。もし政府が番組内容に介入すれば、国民が見なくなるだけなので、意味がありません。こうすれば、NHKをめぐるすべての問題が解決されます。
分割される民間放送会社は、今の子会社群を合併し母体して発足すれば、剰余金1,100億円を資本とできます。NHKには大河ドラマや紅白歌合戦、相撲、メジャーリーグ中継など有料視聴契約になじむコンテンツが多いので、この民間放送会社は、有料視聴契約収入で経営します。こうすれば既存の民間放送を圧迫せずに済みます。
給与などの待遇面も持ち株会社で自由に設定できるので、NHK職員の中にあるという民間キー局に比べ収入が少ないという不満も解消でます。
NHK子会社群は、NHKが公共放送と称しながら実態は巨大な民間企業(民放)であることを示すとともに、NHK受信料問題の解決策を示しています。