携帯電話事業は国有化して公益事業の本姿に戻せ
携帯電話事業にやっとメスが入りそうです。6月に総務省が接続料金の値下げと2年縛り契約の見直しを求めるとの報道がありましたし、公正取引委員会は、4年縛りは違法の恐れがあると報告書に明記したとの報道です。
しかし、私は実効性に疑問を持っています。現在問題になっているのは、携帯電話事業が国民収奪システム化していることです。携帯電話3社の2017年度決算を見ると、売上高約13兆円(ソフトバンクは国内通信売上のみ)、営業利益約2兆6,000億円です。営業利益率は約20%もあります。これが如何に暴利かは、同じ公益事業である電力会社の決算と比較してみれば分かります。電力9社の2017年度決算は、売上高約19兆円、営業利益約9,800億円、営業利益率約5%です。電力9社の合計営業利益は、携帯電話のNTTドコモ(約9,700億円)KDDI(焼9,600億円)並であり、3位のソフトバンクでも約6,700億円あります。公益事業は、国民全員の生活基盤を支えるものであり、安定供給と安価な価格が基本です。そのため公益企業は、コストに適正利益を乗せた利益水準とすると言うのが社会的なコンセンサスでした。ところが同じ公益企業である携帯電話3社はこのコンセンサスを忘れ、国民のライフライン事業であることを利用して、家計から無制限の収奪を図っているのです。日本は4,5年前までの20年近くデフレに苦しみ、家計の収入は減り続けてきました。最近賃上げの動きも出てきましたが、家計収入が増えているのは大企業など恵まれた家計のみです。その中携帯電話で13兆円も吸い上げられたら、家計が苦しくなるのは当たり前です。当然他の支出を削って対応するしかなく、食費を削り、新聞を止めるなどして対応しています。スーパーの売上が伸びない、新聞購読部数が減り続けるのはこのためです。
携帯電話3社の高収益の最大の原因は、回線使用料を高額に設定しているからです。MVNO(仮想移動体通信事業者)を格安携帯と称して携帯料金が下がったように見せかけていますが、回線線使用料は下がっていませんから、携帯電話3社の売上高および利益水準は殆ど落ちていません。むしろMVNOの回線使用量が増えて回線使用料収入が増えています。そして、ソフトバンクやKDDIはY!モバイルやUQモバイルというMVNOを作り、他のMVNOの料金引き下げの防波堤にしています。なぜなら、他のVMNOは体力のあるY!モバイルやUQモバイル以下に料金を下げることはできないからです。回線使用料の高額設定とY!モバイルおよびUQモバイルという自社MVNOの2つの仕組みで、携帯電話3社の国民収奪システムはがっちりと維持されているのです。
それに2年縛り、4年縛り契約の存在です。2年や4年という長期の契約は、携帯電話3社にとって本来儲からない契約でないといけないのですが、逆に今の13兆円の売上高と2兆6,000億円の営業利益を生む原因になっています。これがある限り、携帯電話3社のシェアに大きな変動はありませんし、収益に変化もありません。
携帯電話3社がこれだけの高収益を貪っているということは、家計がそれだけ苦しくなっているということです。この携帯電話3社の高収益システムを作り、維持しているのが監督官庁である総務省なのですから驚きです。携帯電話会社のある首脳は決算発表の席上「私どもは総務省が決めたルールの乗っ取ってやっているだけ」と述べています。国民の奉仕者であるはずの総務省が携帯電話3社の奉仕者に成り下がり、家計から収奪するシステムを構築しているのです。
そういう総務省が携帯電話3社に回線使用料金の値下げ、2年縛り契約の見直しを要請するというのですから、実効性が上がるとは思えません。これまで総務省は何回か行政指導を行ってきましたが、そのたびに携帯電話3社は骨抜きにしてきました。まるで総務省と打ち合わせていたようなやり方です。これを見てきたものとしては、今度の総務省の行政指導が実効性を伴うとは思えません。
一方公正取引委員会は、地方金融機関の合併やリニア談合など教科書的な独占や談合問題を扱い、社会的弊害が大きい携帯電話業界における不公正な取引方法や寡占の実体を見て見ぬふりをしてきました。そのため今度の姿勢も本気度が疑われます。
私は、携帯電話3社の国民収奪システムを改めるには、一旦携帯電話3社を国有化するしかないと思います。現在の携帯電話事業は、本来料金引き下げになるはずの民営化と逆になっているのですから、今度は国有化して料金を下げるしかないと思います。そして本来の公益事業の状態に戻ったら改めて民営化すればよいのです。国有化して携帯電話料金を約5兆円引き上げます。そうすれば消費税2%(金額にして約5兆円)引き上げの悪影響も回避できます。
今の携帯電話3社のやり方は、他の公益企業の垂涎の的であり、この仕組みをまねる動きが出ています。まず電力会社が2年縛り契約の営業を始めています。今後ガス、水道、鉄道会社もやり始めるでしょう。そうすれば、公益事業会社はみな営業利益率20%を誇る優良企業に変身します。その変わり家計は破綻するところが多数出ます。そのとき日本は社会主義社会に移行することになります。そうならないためにも、携帯電話3社を国有化し、携帯電話事業を本来の公益事業に戻すべきです。