「熊本モンロー主義」の克服が必要では?

熊本県人の気質は、肥後もっこすとか肥後の引き倒しとか言われ、あまり芳しい印象がありません。私は同じ熊本県人としてこのブログ(2018年5月31日付)で、肥後もっこすとは、小異をもって自己アイデンティティとしているのであり、言うなればデカルト的ということだと書きました。また肥後の引き倒しについては、その実体は歴史的に熊本地方にある相互不干渉主義の表れであり、積極的に人の足を引っ張たり、成功者を潰そうとする行動ではない、と説明しました。この説明は、割と本質を突いていると自負しています。

それでもこれらの熊本県人の気質が熊本の発展の妨げになっているような気がしてなりません。前述のような言い換えは、この懸念の解決には役立ちません。やはり県外の人から肥後もっこすや肥後の引き倒しと言われる気質を少し改善する必要があるように思います。それは、特に県外の人との関係においてです。県外の人との関係が問題なのは、熊本県が豊かになるためには県外から資本を入れ、人に来てもらわないといけないからです。豊かさというといろいろな考え方があろうと思いますが、例えば経済面において県民一人当たり所得で見ると、熊本は全国で43位(242万円)とビリから5番目です。多分これを初めて知ったという県民が多いでしょうし、驚きが大きいと思います。この数字から判断すると、熊本は全国でも貧しい県ということになります。ただし、人口では176万人(2017年10月末)と全国23位ですから、県としての所得の総額では25位(4.3兆円)となります。県内総生産という指標でみると一人当たりでは42位(315万円)、総額では25位(5.6兆円)となります。即ち、人口効果で県の絶対的経済力は全国の真ん中くらいなのに、1人当たりでみるとビリに近いということです。何故1人当たりの数字が低くなるのか?そこまで分析された資料は見当たりませんが、待遇が良い事業所が少ないとか、共稼ぎが少ない、雇用の場が少ないなどが考えられます。ただし、県民一人当たり所得の下位には、九州の県が集まっており(鹿児島42位、長崎44位、宮崎45位、沖縄47)、九州が大市場の首都圏、関西圏から遠いという地理的条件が大きいかも知れません。

こういう中で熊本を経済的にもっと豊かな県にしていくためには、県外から事業所を誘致するとともに、県外から来る人を増やす必要があります。これには、今の県民性を少し変える必要があると思われます。なぜなら、大きな事業所においては、協調性ある従業員が求められ、頑固とか他人の足を引っ張る人と言うのは一番困るからです。熊本に日本の大企業の大きな事業所が少ないのは、こういう気質の評価が影響しているのではないかと思われます。また、今後日本の人口は減り続け、熊本県の人口も2015年の179万人から2045年には144万人に減少する予想です(国立社会保障・人口問題研究所予想)。熊本県の計画では、これを2045年度155万人までの減少に留めるとなっていますが、これは熊本地震の影響もあり難しいと思われます。悪くすると140万人を下回る可能性もあります。早く底打ち、反転上昇に転じさせるためには、若者の雇用の場の確保が最も重要になります。現在蒲島知事は創造的復興というスローガンを掲げ、復興と同時に熊本県に多くの人が訪れる仕組みや雇用の場の増加を図ろうとされているように思います。熊本空港運営の民間委託や八代港大型クルーズ船拠点化がこの例です。これにより県内観光業を活性し、観光収入やサービス業の雇用を増やす狙いがあると思われます。しかし、雇用の場確保の本丸は、大型事業所の誘致だと思われます。この場合、前述した県民気質の克服が必要になると思われます。熊本県人の肥後もっこすという気質は悪くないし、肥後の引き倒しと言う言葉も、県外の人が誤って表現したものです。肥後の引き倒しの実体は、相互不干渉主義だと言いましたが、これは歴史的にはモンロー主義と言われ、今では排外主義・孤立主義を意味する言葉になっているようです。これを最近知って、熊本の相互不干渉主義は、排外主義的一面があるのではないかと考えるようになりました。そう考えるようになったきっかけは、秀岳館事件です。これは2,3年前全国スポーツ誌に掲載された出来事で、高校野球の熊本県予選でほとんどのレギュラー選手が大阪出身者で占める秀岳館の選手に対し、「大阪代表」とか「よそ者」とかの罵声が浴びせられ、選手がかわいそうだ、という内容でした。これは熊本の高校野球によそ者は入ってくるな、即ち干渉するなということであり、相互不干渉主義が排他主義に形を変えて現れたもののように思われます。最近の実業団バトミントン女子チームの問題も他県出身のリーダーに対する排他的な感情が背景にあるように感じます。これらの出来事は、県外の人たちに熊本は排他的という印象を与えています。その結果、県外の個人は、熊本は移住するところではないと考えますし、企業は、事業所を作る所ではないと考えます。

今後の熊本の発展のためには、創造的復興で人の流入経路を拡大すると共に「熊本モンロー主義」の克服が求められていると思われます。

(こちらも参考にhttp://www.yata-calas.sakura.ne.jp/