東京医大、問題は選抜基準を公表していないことだけ

東京医大の入学者選抜方法がまるで犯罪行為のように取り上げられていますが、果たしてそんなに悪いことでしょうか?

確かに、文部科学省の私立大学研究ブランディング事業に採用された見返りに、当該事業の選定に影響力を持つ文部科学省幹部の息子を入学させたことは贈収賄事件となり刑事犯罪です。しかしそれと、その後報道された女子や3浪以上の入学者を抑えるために、一律減点していたことは、分けて考える必要があります。

女子の受験者に対する減点行為は、女子より男子の割合を多くしたいということであり、女子については離職者が多い、専門分野が偏るという理由に基づくものであり、一定の合理性があります。だたし、一律減点というやり方ではなく、他のやり方があったのは事実だと思います。問題は、これを受験者に公表せずに黙って行っていたことで、これは場合によっては詐欺罪に該当するかもしれません。公表すれば、差別と非難する人が出る、また受験者数が減り受験料収入が減ることを危惧した可能性が大きいと思います。

しかし、事前に選抜基準を受験者に公表しておけば、なんら非難されることではないと思います。私立大学の運営方針の問題です。女子を差別しているというのなら、東京女子医大は男子を差別していることになります。試験の得点だけで選抜していたら、女性医師の数が多くなり過ぎ、男性が望ましい外科や救急救命の医師が不足する可能性が大です。また、女性の場合、出産や育児で勤務できない期間が必ず生じますし、家庭の関係で勤務地が限定されます。だから、ある程度男性合格者を多くするのは合理性があります。

3浪以上の受験生への一律減点についても、3浪以上の入学者は医師国家試験の合格率が悪いという事実から来ており、一定の合理性があります。司法試験でも試験を受けられる回数を5回までに制限しており、医学部入試において制限があってもおかしくありません。東京医大の場合、医師国家試験の合格率を上げることが目的のようですが、医師の判断・治療ミスによる犠牲者を減らすためにこそ必要だと思います。医師が一人前になるには、判断・治療ミスにより何人かの人が犠牲になると言います。たぶん間違いないと思います。この判断・治療ミスの回数は、現役合格者ほど少なく、浪人回数の多い合格者ほど多くなると考えれます。医学部の定員は、約10,000人ですから、難関と言われる国立大学理系に合格できるような学生であれば、何回か浪人すれば合格できます。しかし、浪人回数の多い合格者は、現役合格者と比べると判断力や思考力が落ちるのは間違いありません。これは命を預かる医師の世界では望ましいことではありません。従って、医師の判断・治療ミスによる犠牲者を減らすためにこそ、浪人の回数による制限は合理性があると思われます。むしろ医学部と医師国家試験の受験回数を2、3回までに制限することが望ましいと思われます。

このように、東京医大が設けている選抜基準の考え方は、合理的なものであり何ら非難に値しません。公・国立大学の医学部は、入試の得点のみで入学者を決定しているように見えるかもしれませんが、実際には東京医大と同じような選抜を行っています。それは、最近増やしている地域医療枠での選抜においてです。ここでは現役限定、男性優先の選抜になっています。東京医大の選抜基準は、医療の現状を考えれば当然出てくるものです。