医学部入試は医師採用試験、学力だけでの選抜はありえない
東京医大の入試で、女子と3浪以上の受験生が不利益な扱いを受けていたと批判されています。2次試験において、現役と1浪・2浪の男子受験生については20点加算し、3浪の男子受験生には10点加算、4浪以上の男子受験生には一切加算せず、また女子受験生には一律20%減点していたというものです。これにより、女子と3浪以上の男子の受験者が不利益を受けたと批判されています。
大学側がこれをおこなったのは、女子は進む診療科が偏ること、また産休などで勤務できない期間が生じることなどにより、医療の現場において男子よりニーズが少ないこと、また3浪人以上については、留年者が多いことや国家試験の合格率が悪いことが背景にあるということです。
今回問題なのは、大学側が募集要項に合格させる男女比などの選抜基準を公表していなかったことであり、合格者の割合を男子が多くなるようにすることや、多浪を不利益に扱うことは、非難されることではありません。
医師国家試験は、合格率90%以上であり、何回か受ければ必ずと言ってよいほど合格できるものです。その結果、医学部入試は、医師採用試験と言ってよいものとなっています。ならば、配属される医療現場のニーズによって合格させる男女の割合を決めることは当然です。ただし、東京医大の2次試験の得点から女子受験者の得点を一律20%減点するというのは、良い方法とは言えません。最初に男女の合格者数を設定し、その数に応じ1次試験の男女の合格者数を設定し、2次試験では適正試験や志望動機、チーム医療への適応力、体力なども見て、男女の合格者を決定するべきでした。また、この選抜基準を募集要項で公表しておくべきでした。
多浪を不利益に扱ったことは非難に値しないと思います。医療行為の場合、判断・治療ミスは患者の命にかかわります。従って、なるべくなら判断・治療ミスをしない人が望ましいのは当たり前です。一般には、現役はミスジャッジが少ない人で、それと比べ多浪はミスジャッジが多い人とも言えるわけで、多浪の合格者を回避するのは、医療行為の性格から当然と言えます。東京医大が3浪の受験生に対して加点を少なくし、4浪以上の受験者に対して全く加点しなかったのは、合格者を絞り込む技術的なことであり、非難に値しないと思います。募集要項に、多浪については合格者決定において不利益となると記載しておけばよかったのです。
私は、医学部入試においては、受験回数に制限を設けるべきだと思います。例えば司法試験では、受験回数が5回までに制限されています。これは、あまり長い期間司法試験の勉強を続けることはその人の人生にとって好ましくないと考えてのことと思われます。それは国が決めることでないという考え方もあると思いますが、どこかで線を引いてあげることは本人にとって良いことかも知れません。また、6回以上受験して合格したとしても、現実の法律業務に対処できない可能性が高いという判断もあると思います。医学部受験においては、対処能力の観点から受験回数の制限も正当化されると思います。
日本の多くの医学部にいて、合格させる男女の割合が設定されていると考えられます。それは、男女に体力差や機能差があることから、当然あっておかしくないことです。問題は、それを募集要項で明らかにせず、内部基準として運用していることです。ここは、募集要項に合格させる男女数や大まかな合否基準を公表し、正々堂々とした入試制度にすべきだと思います。ともかく、医学部入試で得点だけで合格者を決定することはありえません。