新聞と総務省が携帯電話料金値下げの抵抗勢力
菅官房長官が「携帯料金は4割下げる余地がある」「携帯電話事業は国民の電波を利用する公益事業でありながら高収益過ぎる」と発言したことから、携帯電話料金に関心が集まっています。菅官房長官の発言後8月23日には情報審議会で審議が開始されており、菅官房長官の発言は、官邸で慎重に検討しての発言と思われます。
この発言は当然であり、むしろ遅すぎたくらいです。携帯電話3社の2018年3月期の決算は、売上高約13兆円、営業利益約2兆6000億円で営業利絵率は約20%に達します(ソフトバンクは国内通信部門のみを考慮)。同じ公益事業である電力会社9社の同期の決算は、売上高約19兆円、営業利益約9800億円、営業利益率約5%ですから、携帯電話3社が如何に儲け過ぎかが分かります。
2人以上の世帯の携帯電話料金で見ると、2000年の28,598円から2017年には122,496円に約93,000円も増加しているという資料もあります。これ迄日本では、食料費や衣料品などの物価が低迷してきましたが、家計所得が減る中で携帯電話料金の支出が増えたことを考えれば当然のことです。この間、新聞の購読率も減少(2000年の世帯購読率ほぼ100%が2017年末では69.8%)していますが、これも携帯電話料金の支出の増加によってもたらされたものです。最近はビールの消費量も減少していますが、これも同様です。家計のやりくりを考えたら、誰でも分かることです。
8月24日の時事通信に「携帯電話料金が下げあれば日銀の2%の物価引き上げ目標に逆風になる」という記事がありました。これは、日銀の2%物価引き上げ目標達成のために携帯電話料金の引き下げは好ましくないという論調に取れます。2%物価目標達成が大切だから、携帯電話事業の儲け過ぎには目を瞑れというのでしょうか?携帯電話料金が高すぎるために、多くの家計が食費や衣料費を削って遣り繰りしていることが分かっていれば、こういう記事は書けないと思います。
携帯電話事業が高収益を謳歌出来た原因の1つは、新聞が携帯電話3社の利益の高さを称賛し、その経営者を持ち上げてきたからです。今の携帯電話3社がやっていることは、国民の財産である携帯電話の電波使用権の許諾を受け公益事業を営んでいることを忘れ、電波の所有者たる国民からお金を巻き上げることです。こんなことをやる経営者が素晴らしい経営者でしょうか?これを可能としている契約は、2年縛りや4年縛り契約と言われていますが、「縛り」と言う言葉は、「国民を収奪システムの中に縛り付ける」というこの契約の内容を良く表しています。日本の契約史上初の国民収奪契約と言ってよいと思います。
携帯電話事業のこの高収益を見て、電力などの他の公益事業会社も黙ってはいません。当然自分らも同じような高収益を目指そうと言うことになります。そのため電力は、携帯電話の2年縛り契約を真似始めています。この携帯電話事業の国民搾取システムが認められるのなら、公益事業会社はすべて携帯電話3社のような高収益会社になります。その結果、家計は公共料金の支払いで圧迫され、生活の基本である衣食住は悲惨な状態となります。このことが理解できたら、時事通信のような「携帯電話料金の引き上げは日銀の2%物価目標達成にマイナス」というような携帯電話料金引き下げにネガティブブな記事は出てこないと思います。
携帯電話料金の引き下げのもう一つの抵抗勢力が総務省です。野田総務大臣は8月24日「携帯電話料金の引き下げを民間会社に命令するわけにはいかない」と述べたという報道がありました。野田大臣は郵政民営化にも反対しましたが、携帯電話料金の値下げにも消極的なようです。この大臣の発言が総務省の姿勢を良く表しています。こ携帯電話3社のある首脳は「私どもは総務省の決めたとおりに事業を行っているだけ」と儲け過ぎの批判をかわしています。即ち、「総務省の指導に従ってやっているだけだから、文句があれば総務省に言って」ということです。携帯電話事業の儲け過ぎは、総務省の姿勢が最大の原因なのです。そもそも携帯電話事業の実務に通じた人材がいない総務省が携帯電話事業を監督することが無理なのです。総務省と携帯電話3社の実体関係は、携帯電話3社の担当者が総務省の担当者に実務を教え、総務省の担当者は教えられた通りに監督するということです。即ち、生徒が先生から習った通りに、監督行政を行っているということです。このような高収益システムを作ってくれた幹部官僚には、退官後たっぷりとお返しがされるのは当然です。直接携帯電話3社に迎え入れると批判されるので、多額の資金が流れている企業(例えば広告会社)の幹部に迎えます。事後収賄罪はありませんから罪には問われませんが、実質的には贈収賄です。こういう関係がある以上、総務省が携帯電話3社に本気で値下げを迫ることはないと思われます。
今後とも新聞は携帯料金の値下げに対してネガティブな記事を書き、総務省は陰から審議会の委員や学識者に値下げ阻止を働きかけるでしょう。これに対して家計は、このような新聞の購読中止し、電波行政の総務省からの分離を政府に働きかけるべきだと思います。
携帯電話料金の公共料金レベルまでの引き下げが成るか否かで、今後家計が救われるか、それとも困窮を極めるかが決まります。