携帯電話3社、5Gの設備投資は十分蓄えている

携帯電話料金の値下げに関して、反対論が思いのほか見られます。携帯電話による収奪の利益を受けている人のは、相当広範囲に及ぶようです。その人たちが述べている反対論は、ちょっと考えればおかしいとお分かります。

反対する理由の1つとして、今後次世代通信規格である5G向けの設備投資が膨らむから、この程度の利益は必要というのがあります。設備投資が膨らむのは事実ですが、これまで過大な利益を上げてきており、その利益が積み上がっていますから、これは考慮する必要はありません。例えば、ソフトバンクの国内通信事業を見ると、2018年3月期は、売上高約3兆2000億円、営業利益約6800億円、営業利益率約21%です。この営業利益は、設備投資の減価償却費4991億円を差し引いたものです。原価償却費は、現金が出ていく費用ではありませんから、現金で考える場合、これを営業利益に加える必要があります。その結果、この期に現金は約1兆1800億円増加する計算になります。しかし、この期に新たに設備投資として約3700億円支出し、その他の支出もあり、実際の現金の増加は5115億円となっています。即ち、ソフトバンクの2018年度には、現金が5115億円蓄積されているのです。2017年度には5618億円です。2期間見ても1兆733億円の現金が蓄積されている計算になります。この状態が数年続いていますから、5Gの設備資金は十分蓄積されているはずなのです。携帯電話3社が儲け過ぎ批判をかわすとすれば、5G向けの設備投資に備えて利益を蓄積したと説明するしかありません。従って、今後5G向けの設備投資資金が膨らむから、今の利益水準が必要と言うのは通用しません。

反対する理由の2つ目として、政府が私企業の活動に介入するのはおかしいというものも見えます。携帯電話事業は、国民の電波の利用権を国から借り受けて行っている公益事業です。これは携帯電話3社も重々承知の上のはずです。従って、その料金水準について政府の干渉を受けるのは当たり前です。もし干渉されるのが嫌なら利用権を返上すればよいのです。携帯電話3社が反論するとすれば、料金については総務省の承認を得て設定してきたということになると思います。実際、携帯電話3社のある首脳は決算説明の際、「私どもは総務省の決めた通りに事業を行っているだけ」と述べています。即ち、国の干渉は事業の性質上当然のことと認めているのです。ここになって、民間企業の活動に国が口を出すのはおかしい、とは言えないはずです。

今後携帯電話事業の在り方が議論されるようですが、このような儲け過ぎ状態がなった根本原因は、次の2つであり、これを解消する必要があります。

(1)回線接続料が高額であること

(2)2年や4年の縛り契約で、実質的には高価な料金で固定するとともに、解約し他社への乗り換えを難しくしていること

(1)については、MVNOと言われる回線を3社から借りて携帯電話サービスを行っている会社の契約が増えても、回線を保有する携帯電話3社の利益が減少しないのを見れば明らかです。自社契約であろうとMVNOとの契約であろうと通信回線を保有していれば儲かる接続料になっているということです。それにKDDIはUQモバイル、ソフトバンクはヤフー!モバイルというMVNOの子会社・孫会社を設け、MVNOの値下げの防波堤としています。この2社に比べたら他のMVNOは資本力がないわけですから、この2社以下の料金体系は設定できません。なんなら、この2社が赤字覚悟の料金を設定して、他のMVNOを潰すことも可能です。この2社の赤字は本体から補填すれば済み、本来の巨額の利益からしたら微々たるものです。従って、回線接続料をコスト+適正利益という公益事業にふさわしいレベルに下げることが最も重要となります。菅官房長官の料金の4割値下げが可能という発言の前提には、接続料はそれ以上下げられるということが含まれているのです。そうすればMVNOは携帯電話3社と同じ土俵で勝負できます。

(2)については、2年縛り契約や4年縛り契約は期間のない契約に比べると安い料金設定になっているのですが、これは期間のない契約の料金を著しく高く設定しているためのであり、決して安い料金を設定しているわけではありません。携帯電話3社においては、この2年縛りや4年縛りが契約の大部分を占めているわけで、これが今の携帯電話3社の高収益をもたらしていることを考えれば分かると思います。そして、これには途中解約した場合、9500円などの違約金が付いており、金額の高さで経済的に解約できなくするとともに、順法意識の高い日本人に解約を躊躇させる効果を狙っています。契約者の心理を圧迫する契約形態は史上初ではないでしょうか?これが世間から「縛り」契約と言う拷問的な響きのある言葉で言われる所以です。悪質極まりない契約だと思います。従って、この縛り契約は根絶する必要がります。これが高収益体質をもたらしていることに気づいた電力会社などが真似始めており、これが公益企業で広範に行われれば、公共料金の上昇、高止まりを招き、家計破綻をもたらします。