大学入学=就職活動です
経団連の会長が就職採用活動の指針(採用指針)の廃止を言い出し、賛否が渦巻いています。採用指針は、大学や政府の要請に答えて経団連が定めてた採用活動に関する指針であり、経団連加盟約1400社に向けた指針です。この指針では、大学生の採用活動は、大学3年生を対象として3月から会社説明会を実施し、6月から面接し、採用決定できることになっています。しかし、これは経団連に加盟していない企業には何の拘束力もないため、新興IT企業や外資系企業など加盟していない企業に優秀な学生を先行採用されてしまうケースが続出しているようです。また、採用の指針には罰則規定もないため、経団連加盟企業に対しても強制力はなく、あまり守られていないのが実体でした。事実、6月の採用決定開始までに約4割の学生が内定し、6月1日には7割近くの学生が内定していたという報道もあります。
このように採用指針は、形骸化している状況でしたため、経団連会長の発言には、経団連加盟企業の中でも賛意を表す経営者が相次いでいます。それに対して、新聞社が経団連加盟企業にアンケートしたところ、就職指針はあった方がよいという意見も半数くらいあったということです。採用活動に積極的な企業は、採用指針廃止派であり、それほど積極的でない企業は、採用指針維持派と分類できると思われます。
私は、採用指針は企業、学生、大学にとってもマイナスであり、廃止すべきだと思います。
先ず企業にとっては、自社の存続を左右する社員の採用について、加盟団体に拘束される理由はありません。それは加盟している趣旨を逸脱しています。もし採用指針に従うことが加盟の要件なら、脱退した方がよいくらいです。。
また、今の採用指針では、採用までの期間が短く、また学生および企業が一斉に採用活動をすることになるため、採用者をじっくり見極めることができません。どうしても採用必要数の充足に走ることになります。企業が自社で活躍できる学生を採用するためには、採用期間の定めは有害です。1年中が採用活動というのが望ましいことになります。
次に学生にとっては、今の採用指針だとみんなで一斉に就職活動するため、希望の会社の説明会にも参加できないということも生じます。また、同僚が内定を得ていくたびに焦りに繋がってきます。この期間、就職がなかなか決まらない学生は地獄だと思います。
そもそも将来就職するために大学に入学してきたわけで、大学での勉強は就職のためのということができます。ならば、1年時から就職活動をしても良いと思います。例えば、夏休みに行きたい企業のインターンをやるとか、アルバイトをやるとかすれば、自分の考えていた企業のイメージと実際の違いが分かり、しっかりした企業選びに繋がります。また、企業にとっても、長い期間にわたって、かつ実際の職場で適性が評価でき、自信をもって採用できると思われます。インターンやアルバイトなどの結果、本人と企業との意思が合えば、1年時で採用が内定しても良いと思われます。内定してしまえば、学生は、その企業に入社後必要となる知識を中心として勉強することになり、勉強に実が入ります。決まったから遊ぼうということにはならないと思います。このように優秀な学生から、1年時、2年次、3年時と決まっていき、4年時まだ決まっていない学生は少数になり、行き先が絞られてきて、結果的に妥当な人材の配置になると考えられます。
大学は、就職が早く決まったら学生が勉強しなくなる、または就職活動に忙殺されて勉強しなくなるということを心配していると思いますが、前述のように就職が早く決まれば勉強に実が入りますし、就職するためにしっかり勉強するということになります。だから、大学の心配は杞憂です。
採用指針の問題は、日本社会の横並び意識が背景にあります。逆に言えば、創意工夫、自己決定意識の弱さです。これは世界的競争においては、日本の弱点になると思われます。この点からも、採用指針は廃止すべきです。