大学無償化でなく進路の多様化を進めるべき
政府は、2020年より低所得世帯の大学進学者に対して授業料の減免などを始め、大学教育の無償化を目指す方針ということです。
この政策は間違っていると思います。
2017年3月の高校卒業生107万5千人のうち、大学・短大進学者は58万9千人で、進学率は54.8%となっています(旺文社調べ)。2004年が45.3%ですので9.5%の伸びです。しかし、高校卒業生数は123万5千人から107万5千人へと16万人減少していますので、進学者数は2万9千人の増加に留まります。
果たして、こんなにたくさんの人が大学に行く必要があるのでしょうか?これは大学に行けばそれだけの見返りがあるのか、とも言い換えられます。これは、最近奨学金破産が増えていることからの問題意識でもあります。
私は30年以上会社員を務めました。私が大学進学当時、両親は死去しており、国立大学以外の進学は不可能でした。当時の国立大学は、授業料が年間3万6千円で、寮費が月100円と安かったから進学できました。これが今では授業料が年間54万円程度で、入学金が28万円程度となっています。私立大学の場合、この2倍くらいになると思われます。
こうなると、低所得世帯の子は年間授業料を賄える程度の奨学金を得、かつ相当アルバイトをしないと進学できないと思います。奨学金は、実体はローンであり、就職後返済しなければなりません。私立大学だと奨学金で400万円くらいのローンを抱えた人もでてくると思います。これも卒業後、良い会社に入り、終身雇用が約束されていれば、問題ありません。しかし、大学を出て良い会社に入れるのは、全体の20%もいないと思います。即ち、残り80%はこんなはずではなかった就職になるわけです。
そういう訳で、大学進学はその後の生活の安定を保証してくれるものではなくなっています。大学に入って良い会社に入れて、大学進学のメリットを享受できる人は、進学者の20%程度しかいないのです。ならば、残り80%の人は大学に進学する意味が無いわけで、大学進学以外の進路を考えた方がよいことになります。
大学でも医学部、歯学部、薬学部、教育学部などは専門職養成課程であり、確かな職業確保に通じています。また工学部も細かな学科に分かれており、職業養成課程とも言えます。
従って、奨学金というローンを背負って大学に行くのなら、確実に職業にありつける学部・学科にいくべきです。理学部、法学部、経済学部、文学部など職業とあまり結びつていない学部はさけるべきです。このように将来の生活の安定を保証しない大学進学よりは、社会でニーズが大きい看護師などの医療資格、保育士や幼稚園教師などの資格が取得をでき、生活の安定が期待できる専門学校に進んだ方がよいと思われます。
また、人は自分が好きな職業、自分が得意とすること・強みを生かせる仕事でないと続かないと思われます。従って、進路はそれを考えて決定すべきです。この点からも、大学進学は勉強が好きで、かつ成績が良い人が選択する進路であり、勉強が嫌い、または成績がそんなに良くない人が選択する進路ではありません。
いま政府がすべきことは、単に大学だけを無償化することではなく、多様な職業訓練のための進路を支援することだと思います。