奨学金破産、貸与限度額の設定などの対策が必要

奨学金破産が問題になっています。奨学金が返せず自己破産の申請に至った人が累計1万人に達したという報道がありました。これについては、長い期間の累計であることを考えれば、大した数ではないという見方もあると思います。

問題は、制度にあると思います。奨学金を借りるのは、高校生か大学生のときで、いずれも経済観念が未熟なときです。このときは、奨学金が消費者ローンと同じようなものであることを分かっていない人が大部分だと思います。成績優秀だから選ばれてお金が貰えると思っている人もいると思います。私がそうでした。従って、本当はローン契約の当事者になって契約を締結できる状態ではないのです。しかし、保護者が連帯保証人になっており、親権者が契約代理人として結んだことと同じであり、契約は有効です。

その後奨学金総額が600万円とか800万円となると、貸す方にも問題があると言わざるを得ません。通常個人が銀行からローンを受ける場合、審査があります。返済能力に応じてローン限度額が決まります。奨学金総額が600万円とか800万円となると、ローン審査上返済に疑問符がつくはずです。医学部や薬学部など高収入が期待できる学部に進学するなら分かりますが、その他の学部に進学した大部分の人にとっては、返済できない人が出てくるのは確実な金額です。

これまで奨学金がローンであることはあまり意識されてきませんでしたが、奨学金破産がここまで来たら、奨学金はローンであることを明確にし、奨学金破産を防ぐ制度を設計する必要があります。

先ず、一般のローンと同じように貸付限度額を設定する必要があると思います。高校、大学を通算して400万円程度に制限すべきです。大学卒業時に返済可能と考えられるのは、これくらいが精一杯です。成績優秀でありながら、家計が貧しくこれでは足りないと言う人がいたら、給付型奨学金が支給されるよう設計すべきでしょう。

2つ目に、返済不可能な状態に陥った場合に、破産しなくてもよい制度を作ることです。それには、住宅ローンにおいてローンを借りた人が働けなくなった場合にローンが返済免除になる団体保険制度が考えられます。現在の日本育英会の奨学金制度でも、返済免除の制度があるようですが、基準が明確でなく、なかなか認められないようです。ならば奨学金受給者を非保険者団体として奨学金受給者が保険金を拠出(奨学金に上乗せして負担する)し、もし奨学金受給者が就職後、病気や事故などで働けなくなったら、団体保険により返済され、奨学金の返済が免除となるようにします。これは相互扶助の考え方に基づくものであり、奨学金受給者の納得も得られると思います。これにより、多くの自己破産を防ぐことができます。

とりあえずこの2つの対策くらいはとるべきですが、根本的には、大学に行っても割に合わない人は、大学に行かないようにすることです。