本庶先生のノーベル賞、非科学的姿勢を取り続けた医学会に反省を迫るもの

10月1日、本庶佑京大名誉教授のノーベル医学生理学賞受賞が発表されました。やっぱり来たという感じがします。受賞理由は、抗ガン剤オプジーボで有名になった「PD-1分子を発見、そのメカニズムを解明し、ガン治療に新たな道を拓いた」ことでした。即ち今回の受賞理由は、PD-1分子の発見とそのメカニズムの解明という言う基礎生物学的なことばかりでなく、新しいガン治療薬の開発に道を開いたことが評価されています。「新しいガン治療薬の開発に道を開いた」と言っていますが、受賞の決定的要因は、この発見を利用したガン治療薬オプジーボが上梓され、劇的な治療効果を発揮したことです。そういう意味では、ノーベルがダイナマイトを発明して、爆破処理などで社会に劇的な変化をもたらしたことと同じです。この点で、医学への貢献はこれからとなる2016年の大隅良典東工大教授のオートファジーの仕組みの解明や2012年の山中伸弥京大教授のiPS細胞の発見とは異なります。これまで割と仕組みの解明までの貢献でノーベル賞が与えられていた医学生理学賞の授与基準に変化をもたらす受賞になるかも知れません。

本庶先生の専門領域は免疫学であり、免疫学は基礎医学に属し、これまでガンの治療および治療薬の開発には役立たないと見られてきました。ガンの治療でも自分の血液中の免疫細胞を取り出して培養・増殖させてまた自分の血液中に戻しガンを治療する免疫療法も行なわれてきましたが、多くの大学医学部研究者および臨床医から「医学的効果が認められていない民間療法」という非難を受けてきました。この免疫療法でもガン患者によってはガンが縮小ないし増殖せず生存期間が延びた例が多数あったのは事実でしたが、多くの大学医学部研究者や臨床医は、免疫療法=民間療法というレッテルを張り、客観的に評価しようという姿勢がありませんでした。現在では、ガンの治療に関して免疫療法は、手術、抗ガン剤、放射線治療に次ぐ第4の治療法と言われるようになっています。今後はオプジーボのような免疫治療薬を用いた免疫療法が第一選択で、それで効果がない場合、手術、抗ガン剤、放射線および免疫治療薬を用いないの免疫療法の順位になるのではないでしょうか。

この医学界の姿勢に引っ張られてか製薬企業も、免疫治療薬の開発には見向きをしませんでした。オプジーボが小野薬品と言う日本でもマイナーな製薬企業によって開発されたのは、武田や山之内などの大手が本庶先生の開発提案を一顧だにせず、小野薬品だけしか取り上げなかったからです。

今回の本庶先生の受賞は、免疫治療=民間療法という非科学的なレッテルを張ってきて医学会に反省を迫るものでもあると思います。医学界に属する人たちは、本庶先生が言う「ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年たったら残って1割」という言葉をよくかみしめて、科学者として謙虚な態度が必要だと思います。

 

(こちらのブログ「秀才はノーベル賞はとれない?」も参考に)