医学部入試問題、新聞の書き方に問題あり
最近また医学部入試問題がニュースを賑わしています。文部科学省が東京医科大学入試不正問題を受けて全国の医学部に対して実施した調査の結果、私大数校に不適切な選抜方法の疑いがあったという報告に基づいてのことのようです。不適切な選抜方法とは、東京医大で行われていたように、二次試験で女子は男子に比べ低い得点になるように操作されていたとか、多浪を不利に扱っていた、とかを言うようです。
しかし、これらが不適切な選抜方法でしょうか?東京医大が問題だったのは、文部科学省のプロジェクトの選定に絡んで、権限のある文部官僚に便宜を要請し、見返りに当該文部官僚の息子を入学させたことです。これに関連して、女子と多浪を不利に扱っていたことが問題になりましたが、これは本来問題になることではありません。なぜなら、医学部入試は、医師採用試験でもあり、医師の業務の特性と将来配属される病院などのニーズに基づいて選抜されるものだからです。先ず明確にすべきは、学力のみで選抜されなければならないものではないと言うことです。医師に求められる要素は、学力だけではありません。人柄、優しさ、奉仕の精神などの内面性やコミュニケーション能力、激務に耐えられる体力が大きな割合を占めてきます。医師国家試験の合格率は90%を超えているわけで、学力はある一定の水準を超えていれば問題ありません。国家公務員上級試験でも、試験で採用人数の2倍程度まで絞込み、実際の採用は面接など人間性や適性を見て決定しています。企業では、学力の占める割合はもっと低いと思います。これらの採用においても男女の割合には差がありますし、もちろん3浪以上は採用しないところが多いと思います。このように、男女の割合に差があることや多浪が不利なことは、業務の特性や社会のニーズから当然出て来ることであり、医学部入試において殊更問題にすることではありません。問題として取り上げている新聞社の採用試験においても、業務の性質上男子を圧倒的に多数採用しているでしょうし、3浪以上は採用していないと思います。多浪を不利に扱うことについていえば、この問題を厳しく糾弾している法曹界では、弁護士になるための司法試験で受験回数を5回までに制限して、不利に扱うどころか門前払いしています。
医学部でも、東京女子医大は男子をシャッタアウトしていますし、付属高校を持つ大学医学部では定員の2割以上を付属高校から無試験で入学させています。女子や多浪を不利に扱うことより、こちらの方を遥かに大きな問題ではないでしょうか。
私立大学の医学部入試で改善すべきところは、募集する男女比や多浪は不利であることなど具体的選抜基準を募集要項で明示していないことです。全国の大学医学部の医学部長病院長会議が今後これらについて検討することを決めたということですので、この問題も近々解決されることと思います。
このように医学部入試問題は、選抜基準が明示されていないことが問題であるだけなのに、新聞が学力選抜、男女平等になっていないことが問題のように書き立てているところが問題なのです。新聞のこの浅はかさを見ると、新聞の購読部数が減少するのは当たり前です。