基礎研究の成果を大学に還元する仕組みとしてのロイヤルティ契約

京都大学の本庶先生がノーベル医学生理学賞を受賞して、日本人の受賞者は27人(国籍別では24人)となりました。内訳は物理学賞11人、化学賞7人、医学生理学賞5人、文学賞3人、平和賞1人です。最近は、iPS細胞の山中教授、オートファジーの大隅教授、免疫チェックポイントの本庶先生など基礎科学部門からの受賞者が目立つように思います。これらの受賞者が必ず口にするのが、「もっと基礎科学の研究に予算を」ということです。確かに最近は国立大学の予算が毎年減らされ、それも予算は実用化研究に重点的に配分され、基礎科学は減らされている印象があります。それでもこれだけ基礎科学分野から受賞が続くと、日本の研究力の強みは基礎科学にあるのでは、という気がしてきます。アジアで基礎科学分野でノーベル賞を受賞している国は日本だけですし、世界的にみても基礎科学分野で受賞者を出している国は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツくらいだと思います。基礎科学の国への貢献は、今後の産業化にとって種から押さえられることにあります。iPS細胞は今後大きな産業を形成する可能性が高いですが、根っこの特許を日本が抑えていることから、多くの利益が日本にもたらされる可能性があります。本庶先生の免疫チェックポイントの研究では、その阻害剤がガン治療で大きな成果を上げたことが受賞に原因になっています。これを取り上げたのは小野薬品と言う日本のマイナーな製薬会社だけでしたが、チェックポイント阻害剤オプジーボは小野薬品の業容を一変させました。2017年度の小野薬品の売上高約2000億円のうち約900億円占めています。まだ6つの癌腫でしか適用を認められていないということですから、まだまだ売り上げを伸ばすと思われます。注目すべきは、小野薬品と本庶先生の間でロイヤリティ支払いの契約があることです。本庶先生は、このロイヤリティ収入が京大に入るようにし、京大の若手研究者の基礎研究を支援したいということを言われていました。オプジーボの売上が今後増大していくことを考えると、このロイヤリティ収入は大きな金額となることが予想され、京大の若手研究者の基礎研究を後押しすることが予想されます。この仕組みがiPS研究でも導入されれば、京大のロイヤリティ収入は巨額になると予想されます。そうなると京大は、強固な基礎研究王国となるでしょう。

このように基礎研究は、巨額のロイヤリティ収入をもたらし、基礎研究を後押しする可能性があります。また、どこにも負けない産業領域を作る可能性があります。

日本はこういう視点から基礎研究を見直す必要がると思います。