クレジットカード決済によるポイント還元策は、中小小売店を廃業に追い込む

政府は2019年10月1日からの消費税2%引き上げに伴う景気対策として、ポイント還元を実施する計画だという報道です。これは、消費者がクレジットカードなど現金以外で買い物をした場合に限られるということで、小売店は、カード読み取り装置などを導入し、クレジットカード会社などに手数料を払うことになり、現金決済より利益が少なくなります。クレジットカード会社への手数料は、小売店の信用ランクによって異なり、個人商店などでは数%にもなるため、これまでクレジットカード決済を導入しない中小小売店が多い原因となっています。

このため、政府はクレジットカード会社に対して、消費税導入後「暫くの間」手数料率を3%程度に留めるよう要請するとのことです。

しかし、これは将来中小小売店の多くを廃業に追い込む政策です。消費税導入後「暫くの間」が過ぎると実勢手数料に戻ることになりますが、実勢に戻れば5%以上になることが予想されます。3%でも中小小売店にとっては死活問題のところ、5%以上になるとやって行けないところが多数で出てきます。小口決済である中小小売店にとっては、クレジットカード決済にするメリットは殆どありません。中小小売店にとって、手数料を払うくらいなら、いまのままの現金決済の方が遥かに得です。

今回の政府のやり方は、リクルートが中小の旅行会社から安い料金でツアーの募集業務を代行し、中小の旅行会社が営業部を廃止し募集能力を失くした後、料金を引き上げて行ったやり方と同じです。クレジットカードしか使用できない状況に引きずり込めば、後はクレジットカード会社の言いなりの手数料に従うしかなくなります。その結果、中小小売店はやっていけなくなります。政府のやり方は、クレジットカード会社を支援し、中小小売店を廃業に追い込む政策です。

中小小売店の現金決済への移行を図るなら、銀行のデビットカードなどを使い、代金を買主の銀行の預金口座から引き落とすと共に、売り主の銀行口座に振り込む、或いは振り替える手続きを、銀行間システムで行い、手数料は1%程度に留める必要があります。

政府のこの政策には、もう一つ大きな問題があります。それは、低所得者や退職して定期収入がない人はクレジットカードが持てないということです。私は退職後定期収入が無くなったため、クレジットカードを返却しました。日常生活はなんら不自由ないのですが、格安スマホの契約などクレジットカード決済しか認めないものがあり、年金収入(厚生年金部分)もあることから最近クレジットカードの発行を申請しました。しかし、結果は不可でした。どうも私の年金収入ぐらいではクレジットカードは発行されないようです。年金の金額にもよるのかも知れませんが、多くの年金生活者には、クレジットカードは発行されないはずです。従って、政府が考えているクレジットカード使用によるポイント還元政策は、そもそも低所得者、年金生活者には使えないのです。

銀行が発行するデビットカードなら預金口座から引き落としますから、低所得者や年金生活者でも持てますし、預金の多い年金生活者には便利です。しかし、デビットカードは今回の対象からは除かれていると思われます。それは、銀行のデビットカードではポイントを付与していないからです。デビットカードにもクレジット機能がついたもの(デビット・クレジットカード)があり、これを使えばクレジット会社でポイント計算ができるはずです。しかも、これは銀行預金の範囲内で使えるものですから、貸し倒れ可能性0であり、一般クレジットカードのような高額の手数料は不要なはずなのに、クレジット会社は、加盟店より一般のクレジットカードと同額の手数料を取っていると思われます。そして、そのうちの一定割合を銀行にバックし、個人にもバックしてしています。従って、デビット・クレジットカードについては、クレジットカード会社が加盟店から取る手数料を恒久的に下げられるはずです。

政府が中小小売店に現金を使わない決済の導入を求めるなら、今のような将来中小小売店を廃業に追い込むやり方ではなく、例えば銀行のデビットカードを使い、銀行間のコンピュータシステムで決済できるような安価な決済システムを用意する必要がります。