マンションは管理が重要と言うけれど

私は、東京都品川区内にマンションを買い、10数年住んでいました。バブル崩壊後、不動産が動かない中で買いました。バブルの頃1億円前後で販売する予定で地上げし、建築に着手したけれど、バブル崩壊で売れる見込みがなくなり、融資した金融会社が取得し、その親会社が社宅として使用していたものでした。躯体はしっかりしていましたが、内装は徹底的に材質を落としていました。そして、当初販売価格の半値以下で処分売りに出した物件で、全24戸という小さなマンションでした。購入後暫くして10年目の大規模修繕がありました。前に社宅として使用していた会社から修繕積立金を引き継いで約1億円の修繕積立金があり、無事に終了しました。

私の部屋は1階で、管理費が月8,000円、修繕積立金が14,000円でした。全24戸ですから、通常はこんな額では済みません。こんな額で済んだのは、地下に駐車場15台分があり、この収入を管理費および修繕積立金に充てていたからです。駐車場は、機械式2段の駐車場14台と平置き1台でした。機械式の1階が34,000円、2階が32,000円で、平置きが35,000円だったと思います。当初は15台全部が埋まっており、毎月約50万円、年間約600万円の収入があったのです。

その後、不況が長引いた結果、駐車場の利用が半分の7、8台に減ってしまいました。この結果、管理費を値上げしないと年間約900万円の管理費が賄えなくなりました。当時私は管理組合の監事をやっていましたので、管理費を分析し、管理人の廃止と管理会社を入札制にして管理費を下げることを提案しました。管理人は、週4日のゴミ出しくらいしか仕事がないのに、管理費が十分あるということで置いた経緯がありました。管理人を廃止すると年間約100万円の管理費削減となりました。管理会社を入札制にしようと考えたのは、バブル崩壊後物価やサービス価格が大きく値下がりしたにも関わらず、管理費用は下がっていなかったからです。

こういう提案を管理組合の総会にすることを管理会社に言ったところ、管理会社から管理費用の見直しの提案をさせて欲しいとの申し出がありました。その後管理会社から出て来たのは、年間約900万円の管理費用を約630万円程度に下げられるという提案でした。もちろん管理人の廃止は含まれてのものです。驚きの削減額でした。やはり管理会社内部では機械式駐車場や地下防火シャターの点検費など外注に出していた費用は下がっていたようで、それらを管理費用に反映させたものと思われました。そもそも管理会社の手数料は、管理費用総額の7%と決められていたため、管理費用が下がると、管理会社の手数料が減るため、管理会社が管理費用を下げようとしなかったようです。

これを以て管理組合の臨時総会にかけることにしました。そのときの管理組合は、理事長は女性で、副理事長は男性でした。私が推進する管理費改革について、理事長はどうでもよい派、副理事長は積極派でした。

総会当日出席者と議決権行使書の賛否と委任状を確認して見ると、管理費を下げる議案については全員賛成、管理人を廃止する議案については、賛成11票、反対6票、理事長一任の委任状が6票でした。この結果、管理人を廃止する議案については、理事長が委任状を反対で行使すれば否決される状況であることが分かりました。私は、こんな重要な議案の賛否を理事長一任にするなどありえないとがっかりしましたが、否決もあるなと思いました。しかし、なんと理事長は当日の総会を欠席したのです。あまりに重い判断をすることになったため、逃げ出したものと思われました。その場合、組合規則上副理事長が代行するとなっていたため、副理事長は委任状を賛成で行使し、議案は成立しました。

このように管理費引き下げおよび管理人廃止については、私の提案通りになったのですが、管理費および大規模修理費が不足する状況で、管理人廃止に対して、反対が6名、理事長に一任が6人もいて、その結果議案が否決されそうになったことに私は大変驚かされました。管理費はこれで回るようになったのですが、大規模修理に要する修繕積立金は大幅に不足し、20年目の大規模修理は実施できないのは確実でした。

私はこの件があってから、このマンションを売却し、退去することを決めました。こんな無責任な人たちとマンションの運命を共にするのは御免蒙ります。案の定、マンションは、私が売却した時点で20年目の大規模修理の時期は過ぎていましたが、修繕積立金が大きく不足し、大規模修理は延び延びとなっていました。私の計算では、一戸当たりの毎月の修繕積立金をその当時の金額の倍以上(各戸3万円以上)に値上げする必要がありました。このように住人の多数決で決めるマンションの管理については、住民間の意識のずれが大きく、健全な管理は難しいと思われます。これは多くのマンションで起きる事態で、マンション購入を検討さる方は考慮すべきことでだと思います。私は、マンションは御免被ります。