携帯電話料金の値下げ、代理店網のスリム化が欠かせない
ソフトバンクが2019年3月中間期の決算を発表しました。国内通信部門を見ると売上高約1兆7,000億円、営業利益約4,470億円、営業利益率約26%です。相変わらず凄いと言うしかありません。この高収益は、家計の窮乏と裏表の関係にあるのですから、菅官房長官が「携帯電話3社は儲け過ぎ。公益事業がこんな高収益は許されない。」というのが納得できます。
今回のソフトバンクの中間決算発表で注目されたのは、孫社長が発表した国内通信部門の人員削減計画です。国内通信部門の人数の約4割、6,800人を削減(他の部門に配転)するということです。これについて記者が「官邸の値下げ要請の影響か」と問うと、あっさり「そうです」と答えていました。携帯電話料金の大幅値下げの流れは変わらないと見ていることが分かります。というより、もう十分儲けさせてもらったから仕方がないと思っているのではないでしょうか。これまでが異常だったのです。この考えの基に孫社長は、この12月には国内通信部門をIPOしようとしています。ここで株式を売り出し2~3兆円を回収する計画のようですから、来年以降の10年分以上の減収分を回収できることになります。ここら辺は賢いです。
6,800人員の削減から言えることは、これだけの人員を削減しても業務運営には支障がないわけで、これまで儲かり過ぎるためこれだけの余剰人員を抱えていたことになります。これは利益隠しのためでもあったのです。
携帯電話料金については、通信料金と端末売上を合わせて考える必要があります。携帯電話3社は、これまで端末販売と通信契約をセットにして、端末の割賦販売価格と通信料を合わせて請求してきました。携帯電話3社は、今後この方式をやめ、端末販売価格と通信料を分離し、通信料のみを下げようとしています。しかし、それでは、家計負担は大して下がらないのです。
携帯電話による家計負担は、携帯電話3社の売上高に相当する約13兆円です。NTTドコモは、通信料を2~4割値下げし、4,000億円程度減収になると言っていますので、携帯電話3社が同様な値下げをしても、売上高は1兆円程度しか落ちません。即ち家計の支出は1兆円程度しか軽くならないということです。2018年3月期の決算に当て嵌めると売上高12兆円、営業利益1兆6,000億円、営業利益率約13%となります。しかし、実際は代理店への奨励金などが減少し、営業利益額はそんなに減らないはずです。携帯電話販売には、まだまだ削減できるコストが隠されているのです。
その1つが代理店コストです。街には携帯電話3社の代理店が満ち溢れています。それもどこも混んでおり大変待たされる状況です。これは、端末販売と通信契約をセットとして、複雑な契約内容としているからです。また、更新は自動更新なのに、解約は代理店に出向かないとできないなど、代理店を解約を防ぐシステムとして使っているからです。この代理店維持のためのコストは3社で1~3兆円あると思われます。これをネットでできるようにすれば、代理店は不要となり、この分更に携帯電話料金は下げられます。格安スマホ会社はネットで対応していますので、携帯電話3社もできるはずです。
菅官房長官が言った「携帯電話通信料は4割下げられる」とは、13兆円×0.4=5.2兆円(約5兆円)のことです。これを実現するためには、携帯電話3社が持つ通信回線を通信サービスを行う各社の共通プラットホームとして、電力送電線会社のように別会社化し、コスト+適正利益で使えるようにすることが不可欠です。それに加え、現在代理店で行っている手続きをネット経由として、代理店網を減らす必要があります。この2つを行えば、携帯電話による家計の負担は、5兆円減らせます。その結果、携帯電話3社の売上は、一旦約8兆円程度に落ちますが、過剰なコストも減るため、営業利益4,000億円、営業利益率5%という公益企業の利益水準となります。しかし、通信を使ったサービスは無限の広がりを持っており、ここから通信料の伸びや非通信分野の伸びで業績は右肩上がりで伸びて行きます。
今回の携帯電話料金問題では、この道筋をつける必要があります。それができないと、電力・ガス・鉄道など公益企業がみな携帯電話3社の利益水準を目指し、料金引き上げに走ります。これらの企業が携帯電話3社並みの利益水準になれば、家計負担は軽く10兆円増えます。低所得家計を中心に家計破綻が続出します。今回の携帯電話料金値下げの問題は、家計破綻を防げるか否かの問題です