公正取引委員会が携帯電話料金問題を引き起こした
政府は11月6日未来投資会議を開き、地方銀行の統合基準見直しに向けた議論を始めたという報道です。これは、長崎の地銀の統合に際し、公正取引委員会が全体的に見れば大したことないことに拘り、統合審査を長引かせたことに起因するものです。
長崎の地銀同士の例では、長崎は人口減少が著しく、2つの地銀ではやって行けなくなることは明白でした。それを公正取引委員会は、統合後の銀行の融資シェアが高すぎるとして、債権譲渡などでシェアを低めるよう主張し、統合審査を長引かせました。長期的に見て、地銀1行しか成り立たない地域においては、お互いに体力が無くならない間に統合することを優先すべきであって、融資シェアの問題などは、他県から入ってきている銀行もあり、徐々に調整されます。従って、統合後解決すべき点を指摘しておけば良いことであって、それが実現するまで統合を認めないと言い張るようなことではありませんでした。銀行には、金融庁という監督権限の強い監督官庁があり、銀行業界は金融庁の指導でどうでもなります。公正取引委員会の本件にと対する取り組みは、誰が見ても妥当性を欠くものでした。
それ以外にも筋の悪い取り組みがありました。それはリニア中央新幹線工事の談合事件です。これは大手建設4社が談合して工事を分け合っていたと言って、東京地検と公正取引委員会が大手建設4社に調査に入ったものです。このうち大林組と清水建設は容疑を認めましたが、大成建設と鹿島は否認しています。大林組と清水建設については、東京地裁で判決(罰金2億円と1億8000万円)が確定し、大成建設と鹿島は裁判で争うということです。リニア中央新幹線と言えば、JR東海が自費で建設する計画で、国家資金の投入を拒み続けてきたプロジェクトです。それを大阪までの早期延伸を旗印に政治が介入し、無理やりJR東海に国家資金の投入を飲ませたものです。談合事件に関わる建設工事は、東京駅と名古屋駅に関するものであり、国家資金の投入前から動いていたものです。それを無理やり国家資金を押し込んでおいて、多額の国家資金が投入されるプロジェクトで談合を行うとはけしからんとは、ちょっとおかしいと思います。JR東海が自費でプロジェクトを進めていたら、なんら問題(刑事事件や独占禁止法違反)にならなかったのですから、JR東海や建設4社にとっては、だまし討ちとも言える話です。これによる効果は、建設工事の遅延のみです。検察と公正取引委員会の得点稼ぎとしか思えない、いわゆる筋の悪い案件です。
これらの2つの事件を取り上げるくらいなら、現在多くの家計が損害を被っている携帯電話3社の寡占による競争阻害を取り上げるべきでした。携帯電話3社は、2018年3月期の決算は売上高約13兆円、営業利益約2兆6,000億円、営業利益率20%というおおよそ公益企業とは言えない高収益となっています。業界3位のソフトバンクでさえ、6,800億円の営業利益を上げています。誰が見ても3社の寡占であり、競争不存在であることは明白です。それの原因が2年縛りや4年縛りと言われる契約にあることも明白でした。これに対して公正取引委員会は、調査に入らないばかりか、何の有効な手も打ちませんでした。その結果、携帯電話3社は、公正取引委員会が承認しているものと捉え、ますます家計収奪を強めました。この5年間に携帯電話3社が揚げた営業利益は10兆円を超えます。家計から携帯電話3社に流れたお金は50兆円(売上高に相当)を超えます。ちゃんとした競争が行われていたら、こんなに家計からお金が携帯電話3社に流出することはありませんでした。従って、本件に対する公正取引委員会の怠慢は、家計に巨額の損害を与えています。家計は公正取引委員会にこの損害の賠償を求めたいくらいです。
この一連の公正取引委員会の対応を見ていると、公正取引委員会の劣化が著しいと言わざるをえません。公正取引委員会は、携帯電話3社のような家計に巨額の損害を与える談合にメスを入れることこそ最大の使命です。