地方への移住促進より都市機能の維持が重要課題
新聞報道によると、政府は2019年度から、東京23区から地方に移住する人に補助金を配る制度を新たに設けるそうです。人口の東京一極集中を和らげ、地方活性化につなげる狙いだそうです。地方に移住し起業した場合は300万円、中小企業に転職した場合は100万円を支給するということです。
これは新たに不幸になる人を作り出す政策です。この政策に釣られる地方に移住する人は知れているし、東京23区の人口減少にも、地方の活性化には全く繋がりません。地方の活性化とは、地方の人口減少を止めることと言い換えても良いと思います。地方の人口減少は、氷河の移動のようなものであり、そんなことで止められるものではありません。
地方の人口減少の根本原因は、若い人が働く職場がないことです。従って、これを解決しない限り、地方の活性化はありません。雇用の場を確保するためには、大都市の工場群を地方に移すしかありません。そのためには、地方に移転した工場にかかる税金を著しく低くすることです。例えば、固定資産税や法人税を安くします。法人税を安くすると、本社を移転したり、工場を子会社化したりして、安い法人税を享受できます。こうしない限り、地方の雇用の場は広がらないし、地方の人口減少の流れは止められません。
一方では、今回の政策にもあるように、東京都でも23区以外は人口減少が進んでいるとして、補助金の対象にはなっていません。即ち、今の人口減少は、東京23区や福岡市など一部の大都市を除き、日本の大部分の問題です。ということは、大都市から地方に工場を移転したら、その大都市が人口減少の問題に直面します。大都市の場合、その人口に合わせて生活インフラを整備していますので、これが維持できなくなります。こちらの方がより深刻な問題です。ということは、既に大きく人口減少が進んだ地方の活性化を考えるよりも、東京23区など人口増加が見られる一部の都市以外の大都市、地方都市の活性化策を考えるべきということになります。そう考えると、地方は県庁所在都市とその周辺都市とを単位として、雇用の場確保を考えるべきです。それ以外の地域は、主力産業である農業で、人口減少に応じた営農規模の拡大を図るべきでしょう。例えば、人口が5分の1になれば、農家1軒当たりの営農面積は5倍になっていないといけません。そして、北海道以外の地域においても北海道並みの大規模農家が誕生しないといけません。そうなれば、農業人口減少もそこで底打ち、人口は少ないけれど収入は多い豊かな農村が生まれます。それでいいのではないでしょうか。これまでの地域の問題は、農業人口が多いため、耕作面積が小さく、貧しい農家が多いことでした。結局、地方の人口減少はこれが根本原因です。従って、地域の人口減少を止めるには、営農面積の拡大により豊かな農家を作るしかありません。
このように、地方の人口減少問題は、都市への人口集中と営農規模の拡大による豊かな農村の実現で解決するのが得策と思われます。