マンションは一代限りの利用権

以前マンションを購入し、住んでいました。東京の品川区で、2つの私鉄の駅に10分内外で行ける便利な場所でした。買ったときは、バブル崩壊後不動産が動かなくなっていたときでした。そのマンションもバブル終盤に億ションとして売り出す予定で地上げして建設されたのですが、完成前にバブル崩壊に直面し、融資の担保として金融会社に取られた物件でした。そのため外見は豪華なのですが、内装は相当落とし、その金融会社の社宅として使用後、処分したものでした。

そこでの経験に基づいて言うと、マンションは1代限りの利用権と考えるべきだと思います。私は14、5年住み、建築後22,3年で売却しましたが、計画されていた20年目の修理は、修理積立金不足のため実施できない状況でした。必要な修理費1億円に対し、2000万円程度の積立金しかなかったのです。管理会社の長期修繕計画は、全く作文で、管理組合もチェック能力がなかったのです。私は、仕事で計数を扱っていたので、長期修繕計画は絵に描いた餅であると何度か指摘しました。それに管理会社の変更を提案し、年間約300万円の管理費引き下げも実現しました。しかし、このマンションは24戸と戸数が少ないことから、修繕積立金を倍の月3万円程度に引き上げないと計画通りの修繕はできない状況でした。修繕積立金は、マンション販売当初は安く設定されています。修繕積立金や管理費が高いと売れ行きが悪いからです。それでも10年目の大規模修理は何とかなるのですが、10年目以降臨時の修繕費用が嵩んできて、大規模修繕費不足に直面します。20年目の大規模修繕には10年目の倍、30年目には3倍の修繕費がかかると思った方がよいと思います。住人は、購入時が35歳として30年目には65歳で、年金生活に入っています。そうなると、修繕積立金の増額や不足額の一括拠出ができない人が出てきて、大規模修繕が実施できない事態に陥ります。それに住人不在の室や管理費が払えない人が出てきて、管理費収入も不足してきます。このようにマンションは、30年を超えた辺りから維持コストが急激に高まるとともに、負担できない人が出てきて、いずれ無管理状態に陥ります。その結果、住環境が悪化します。

今後は、確実に定年まで働ける企業は少なくなると思われますので、定年まで働くことを前提にマンションを買うのは危険となります。そうならば、マンションを買うよりも、賃貸で暮らす方が状況に柔軟に対応できます。賃貸なら、収入が落ちたらもっと安い所に引っ越せます。マンションは、なかなか売れないし、早く売るとなると大幅な値下げを求められます。

老後どこかの時点で、老人ホーム入居を考えている人は、一生賃貸で良いと思います。年を取ってから古くなったマンションを処分するのは大変です。もし相続財産としてマンションが残っていたら、相続した子供たちが処分で大変な思いをいます。

結局、マンションを買うことは、一代限りの利用権を取得するに過ぎないことになります。ならば購入せず一生賃貸で暮らすのが賢いように思います。マンションを買わなかった分手持ちの現金が多くなるはずで、その方が安心して暮らせます。