ゴーン逮捕は日産消滅の引き金を引いた

日産会長のカルロス・ゴーン(以下ゴーン)が逮捕されてから約1か月がたちます。新聞報道の情報では、どうも検察の勇み足のようです。ゴーンがやったことは、報酬を後払いにすることであり、これを決めた書類には西川社長の署名もあると言うことですから、社内手続き的には問題ありません。メジャーリーグでも報酬総額を決めて、長期分割で支払うことは行われています。今回検察がゴーンを逮捕した直接的容疑は有価証券報告書への虚偽記載による金融証券取引法違反ですが、多くの専門家から指摘されているように、この犯罪は形式犯であり、重大な犯罪ではありません。それにゴーンの場合、後払いにした報酬を含めても支払い報酬総額は過大なものではなく、重大な違法行為とは言えません。当初は、金融証券取引法違反で入って、もっと重大な犯罪行為を立件するのだろうと予測されていましたが、そんな犯罪行為は出てきそうもありません。例えば、巨額な脱税はありそうにありませんし、重大な背任行為もありそうにありません。ということは、何も検察がしゃしゃり出て逮捕するまでの事件ではなかったのではないということになります。検察には民事不介入の原則がありますので、企業で起きた問題は、企業の経営陣と株主、債権者で解決すべきとされています。日産事件の場合、日産の社内ルール違反と思われる行為について、ゴーンと日本人の取締役、監査役の間で評価が異なっていたところに、検察が日本人の取締役、監査役の応援に入った形です。検察としては、元厚生労働省の木村厚子氏違法逮捕以来抑圧されてきた検察権を、司法取引という新しくできた道具を使って行使する絶好の機会と考えたのでしょう。

ゴーンは金融証券取引法違反で起訴されるでしょうが、重い量刑になることはないと思われます。ゴーン逮捕は、今後の日産の行方に重大な影響を及ぼすと考えれます。新聞報道では、資本関係の見直しに進むかとの憶測もありますが、それはあり得ません。既に日産の株式の43%をルノーが保有しており、日産は実質的にルノーの子会社です。子会社は親会社の意向に従うしかありません。今回の問題は、ルノーの日産統治が緩かったから出てきているものです。今後日産は、子会社としてルノーの完全な支配下に置かれることになります。

ルノーとして日産が魅力的なのは、北米市場と中国市場に強いからです。日本では50万台余の販売台数で国内5位です。日本の販売台数は、日産の総販売数の約10%に過ぎません。ならば、北米と中国の子会社を日産から切り離し、ルノーの子会社し、日産は日本国内向けの会社とします。この結果、日産はいずれ消滅することになります。これが日産の行く末です。ゴーン事件は、日産消滅の引き金を引いたことを意味します。