ゴーン逮捕の報復に日本人経営者が逮捕されるかも
ゴーン逮捕から1か月経過した12月20日、事件に変化がありました。東京地検特捜部が申請したゴーンの3度目の勾留期限の延長を東京地方裁判所が却下したのです。これまで特捜部が申請した勾留期限の延長はほぼ認められてきたため、法曹関係者の間では驚きを持って受け取られました。却下の理由は、有価証券報告書への虚偽記載で2回に分けて逮捕し、さらに勾留を続けるのは行き過ぎと判断されたからのようです。
みんながこれでゴーンは釈放かと考えていたところ、特捜部は翌日会社法違反、特別背任罪で3度目の逮捕を行い、勾留を継続しました。今度の容疑は、リーマンショック後の2008年10月にゴーンが自分の資産運用会社に発生したデリバティブ取引の損失(約19億円)を日産に付け替えた、その後直ぐに元に戻したが、その際サウジアラビアの友人に保証を付けてもらい、その友人には業務委託料という名目で約16億円を支払った、というものです。この約16億円は、保証の対価であり、本来ゴーン自身で支払わないといけないものを、日産から支払わさせたという訳です。
最初の逮捕の罪名である有価証券報告書の虚偽記載は入り口であり、本命は特別背任だろうと言われていたので、とうとう本丸に来たかという印象です。こちらなら逮捕もやむを得ないかという感じがします。ゴーンは、「確かに一旦日産に付け替えたけれども直ぐに戻したので日産には損害は発生していないから、背任にはならい。」「友人への支払いはサウジアラビアでトラブルを解決して貰った対価およびロビー活動の報酬」と主張しているようです。ゴーンの主張を聞くと、弁護士らと入念に相談して実行していることが伺えます。付け替えの際に取引銀行から日産の取締役会の承認が必要であり、その議事録の写しを提出して欲しい、と言われ、ゴーンは当初これを拒否し、最後には具体的内容を曖昧にした議事録の写しを提出したということですので、犯意があったと認定される可能性が高いと思われます。
これから特捜部とゴーンおよびゴーンの弁護団の本当の戦いが始まりますが、ゴーン逮捕は、フランスやブラジル、レバノンなどゴーンが生まれ育った国などで、ゴーン逮捕の報復として、日本の経営者が逮捕されるリスクを発生させたように思います。その後、ファーウェイのCFOがカナダで逮捕され、その報復に中国がカナダ人3名を拘束したという報道がなされていますので、貿易摩擦の手段として相手国の有力経営者を逮捕、拘束することが使われ始めたように思われ、この危惧を大きくしています。
ファーウェイのCFOが逮捕された理由は、取引銀行に虚偽の説明をして、米国が制裁を発動し金融取引を禁止しているイランに送金したというものです。このように金融取引は、軽微な手続き違反で逮捕される恐れがあり、日本人経営者が逮捕されるとしたら、金融取引に絡んでだと思われます。
暫く、海外に行く機会の多い日本の経営者は、気が気でない状態が続くと思われます。