オランダ社から10億円報酬なら有報虚偽記載は無罪
カルロス・ゴーン容疑者(ゴーン容疑者)が日産と三菱自動車(ルノーも入るのでは?)がオランダに設立した統括会社から約10億円の報酬を受け取っていたとの報道がありました。日産の取締役会で行われた不正に関する内部調査の中間報告で明らかにされたということです。
この会社は、日産および三菱自動車の連結対象でないため、報酬の開示義務の対象ではないということですから、有価証券報告書への記載義務はありません。また、オランダ法人ですから、オランダ法が適用され、日本の法律は適用されません。
私は、これまで、ゴーン容疑者が起訴された有価証券報告書虚偽記載罪については、無罪である可能性が高いと述べてきましたが、この事実が出て、その可能性が益々高くなったと思います。東京地検特捜部(特捜部)は、ゴーン容疑者が日産から得ていた報酬は約20億円であり、有価証券報告書に記載した約10億円以外の残りの約10億円は、退職後にコンサルティング契約などの対価として受け取ることになっていたとしています。しかし、ゴーン容疑者(およびケリー容疑者)は、そういうことを考えたのは事実だが、確定したものでないから、記載義務はなかったと抗弁しています。
私は、ゴーン容疑者の主張が正しいと思います。何故なら、ゴーン容疑者と日産がコンサルティング契約などを結ぶとすれば、これらは取締役と会社との取引であり、取締役会の承認が必要ですが、承認されていたという報道はありません。もし、これを取締役会が承認していたとすれば、承認した取締役会の責任問題になります。取締役に虚偽記載の責任が発生しますし、取締役の善管注意義務違反が問われますから、取締役会が承認することは考えられません。従って、コンサルティング契約などがあったとしても、有効とは言えず、報酬として確定しているとは言えません。
また、この契約は、将来日産の業績が悪化したり、ルノーから新たな会長が就任した場合、解消される可能性が高いと思われます。従って、ケリー容疑者など複数の弁護士出身者を側近に抱えるゴーン容疑者がこんな不確実な方法で残りの報酬を受け取ろうとするはずがありません。
ゴーン容疑者が本来貰うべきと考えていた約20億円の報酬を約10億円に抑えたのは、従業員や日本社会の批判を恐れたからであり、日本以外で確実に受け取ろうとするはずです。これがオランダ社を使った方法です。これなら、日本で批判されることはなく、かつ税金も安いということなので、一石二鳥です。今回この事実が分かったことにより、ゴーン容疑者は将来コンサルティング契約により残りの報酬を受け取ろうとしたという特捜部の主張は間違いという可能性が高くなりました。
即ち、有価証券報告書虚偽記載罪は無実の可能性が高くなったということです。
現在ゴーン容疑者の不正として、次々と新しい事実がリークされていますが、どれも経営者のモラルとしてはどうかと思うことであっても、法律違反として罪を問う内容ではありません。会社の中で調査し、不正と認定すれば、ゴーン容疑者に返還を要求し、取締役解任などの処分をすれば済む話です。特捜部が介入する事件ではありませんでした。