資産家や企業はシンガポールへ
リクシルが本社をシンガポールに移転する計画との報道がありました。会社は否定しましたが、実質的なオーナーである潮田会長がシンガポール在住ということが分かれば、十分あり得ることだと思われます。
少し前から、日本人資産家のシンガポール移住が増えています。私が意識し始めたのは、通産省出身のもの言う投資家村上世彰氏がシンガポールに移住したときからでした。村上氏の場合、インサイダー取引容疑で逮捕された後で、積極的に移住したというよりは逃げ出した感がありました。その後ソフトバンクグループの孫社長の弟孫泰三氏もシンガポールに移住しています(期間限定と言っていますが本人が移住と言っています)。また、創業したベンチャー企業を2億円で売却した村田マリ氏もまもなくシンガポールに移住しています(その後DeNAに住まいのまとめサイトを運営するiemoを売却して有名になりました)。このように、日本で一財産築いたらシンガポールに移住するという流れができつつあるように思えます。
個人にとって、シンガポール移住のメリットはなんたって税金のようです。所得税は最高税率20%で、日本の50%より格段に低くなっています。また、株式の売買益や不動産の売却益、配当は非課税です。贈与税や相続税もありません。従って、既に高額所得を得る仕組みがある人、株式投資で大きな利益を上げている人、巨額の資産を有し贈与や相続を考えている人にとっては、魅力的な移住地となります。
リクシルの本社移転の報道があって、次は日本企業のシンガポール移転の動きが始まるように思います。法人税率は日本の23.2%(2018年度)に対して17%と魅力的です。また、日本の輸出型企業の場合、国内の売上比率は下がり続けており、今後も下がり続けることが予想されます。これに対して、東南アジアへの売上は増え続けています。東南アジアは若い人が多い人口構成で、今後とも成長が予想されます。シンガポールに行くと分かりますが、地理的にもアジアの中心は東南アジアであり、中でもシンガポールです。シンガポールは治安もよく、町も日本と遜色ないくらい清潔です。私はシンガポールの町のいたるところにfineに数字が付いた標識を見かけ、fineという単語に罰金という意味があることを知りました。ごみを捨てようなら罰金が科されるのです。ちょっと政府のコントロールが強く窮屈な感じがありますが、政府は優良企業の本社並みの実力を持っており、シンガポールを豊かな国として経営しています。
このようにシンガポールは、資産家や輸出企業にとって間違いなくメリットが大きい国です。従って、今後日本の資産家がシンガポールに移住する流れや輸出型企業が本拠を移す流れが加速すると予想されます。これから就職する学生さんは、この流れに乗れるよう語学など準備しておくことが肝心です。