日産91億円の報酬計上なら取締役・監査役の責任は重大
日産は、自らの報酬を実際より少なく有価証券報告書に記載したとして起訴されているゴーン被告の報酬に関して、その差額にあたるおよそ91億円を、ゴーン被告の報酬と確定し、来週発表する決算に計上する方針を固めた、という報道です。
もしこれが事実なら日産の取締役および監査役の責任は重大ということになります。というのは、報道によるとおよそ91億円は、将来コンサルティング契約などの対価として支払われる計画だったということですが、ゴーン被告と日産が有効なコンサルティングなどの契約を結ぶためには、日産の取締役会の承認が必要ですが、これがあったとは聞きません。日産の取締役会は承認していなかったので、ゴーン容疑者およびケリー容疑者以外の取締役はおよそ91億円の報酬の存在を知らなかったため、有価証券報告書の虚偽記載に気付かず、起訴されなかったものと思われます。このように取締役会が承認していなかったとすれば、ゴーン被告と日産のコンサルティングなどの契約は無効であり、日産にはおよそ91億円の支払い義務はないことになります。起訴理由が無くなってしまいますが、こちらの方が日産にとっては得です。取締役会の承認があったことにしても、昨年の取締役解任および起訴により契約の履行が不可能になったとして契約を解除し、報酬の支払い義務は逃れられると考えているとすれば、これはもう犯罪行為であり、刑事および民事責任を問われることになります。日産の取締役および監査役が取締役会でゴーン容疑者と日産との間のコンサルティングなどの契約を承認していないとすれば、そのまま承認していないと主張すべきです。それが取締役および監査役に求められる本来の任務です。
この問題は、司法取引の負の側面を浮き彫りにしているように思います。司法取引に応じた人たちは、チクった相手が有罪になるよう辻褄合わせをするしかなくなるということです。これにより日産自体が信用を失い、業績不振となります。今回のゴーン事件で本当に裁かれるべき人は、司法取引に持ち込んだ取締役および監査役ではないでしょうか。