「しょうがない」という言葉

サッカーのビッセル神戸は、スペインのバルセロナに所属したイニエスタやビジャ、ドイツのバイエルンやイギリスのアーセナルなどに所属したポドルスキ―が移籍してきて、Jリーグで最も華やかなチームとなりました。それでも昨年はJリーグで10位であり、サッカーはスター選手2,3名いてもどうにもならないスポーツのようです。そんなビッセル神戸で私が注目したのは、昨年の9月に監督に就任したファン・マヌエル・リジョです。スペインでは監督としての実績は余りないようですが、バルセロナやバイエルンなどの監督を歴任し今イギリスのマンチェスター・シティの監督を務めるジョゼップ・グアルディオラが「最も影響を受けた指導者の1人」に挙げているということで、有名です。

どれほど凄いのだろうと監督就任後のチームの成績を注目していたら、順位は上がらず期待外れでした。そんな中で彼のインタビュー記事を読んだら、日本人選手の「しょうがないという言葉には考えさせられた。」と述べていました。まだ2か月程度しか指導していない中で、かつまだ余り日本語も分からない中で、「しょうがない」という日本語を聞き取り、日本人の特質と位置付けたのは凄い観察眼だと思います。

「しょうがない」と言う言葉は、神戸大震災や東日本大震災の際によく聞かれ、日本人の辛抱強さの源泉のように言われます。確かに人の力ではどうしようもない自然災害に際して、あきらめの境地になるには便利な言葉です。しかし、日本人がもう一歩高い段階に進むのを邪魔している言葉でもあるような気がします。本当はここが頑張りどころというところで、頑張らなかった自分を免責する言葉になっている気がします。日本のサッカーもワールドカップに出るのは普通になってきて、ベスト16にも行けるようになりました。しかし、ベスト8となると高い壁があるように思われます。この壁を破るには、確かにリジョが着目したこの「しょうがない」という言葉を無くさないといけないような気がします。それは、サッカーばかりでなく、仕事でもそうです。日本の会社でありながら、英語を公用語とする会社が増えています。売上の半分以上が海外と言う会社が増えているのですから、当たり前です。そうなると、会社内での競争相手は、日本人だけでなく、外国人も加わってきます。外国人には「しょうがない」という言葉はないわけで、日常的に「しょうがない」という言葉を使うことになれた日本人とは、この点で結果に差がつくことになります。

「しょうがない」と言う言葉は、日本のような自然災害の多い国では、理不尽な出来事をあきらめさせる魔法の言葉ですが、一方では、もう一段の頑張りが必要な場面で頑張らなくする甘い言葉でもあります。どうやら、このことを意識し、場面に応じしっかり使い分ける必要がありそうです。