ゴーン保釈は何故?有罪になりようがない事件だから

カルロス・ゴーン容疑者が釈放されました。マスコミには、釈放された理由を推測する記事が見られます。「長期拘留、取り調べへの弁護士同席禁止などに対する世界的批判を気にしたから」との真っ当な推測のほか、「無罪請負人の弁護士を恐れたから」などという週刊誌的な憶測も見られます。本当の理由は単純です。裁判官が本件は起訴に相当せず、裁判になってもゴーン容疑者が有罪になる可能性は低いと考えているからです。

よく考えてみて下さい。有価証券報告書虚偽記載罪については、日産の第三四半期決算報告書にその未払い報酬額として約92億円が計上されましたが、これは確定したものではなく、支払う必要性が生じるかも知れないから保守的に計上したと説明されています。即ち、ゴーン容疑者が当初から説明しているように、有価証券報告書に記載しなかったという報酬については、確実に支払われる保証(契約)はなかったということです。検察は、記載しなかった報酬については、コンサルティング契約などで支払いが確定していたと言っていますが、会社と取締役の間で取引契約を結ぶ場合には、取締役会の承認が必要となっています。これがなされてないのだから、コンサル契約などは確定していないことになります。だから、日産は確定した未払い報酬して計上できないのです。従って、有価証券報告書虚偽記載罪は無罪です。例え有罪であっても逮捕し、長期拘留するような犯罪ではありません。

次に、本丸であるところの特別背任罪ですが、これはリーマンショック後という相当以前の出来事であること、ゴーン容疑者に使途が委ねられていた資金であること、支払いを受けた者から証言が得られていないこと、などから起訴要件が具備していないと考えられます。そもそも日産の社内調査でさえ確定証拠を掴めていない段階で、検察が出て来ることがおかしいのです。日産の社内調査で使途違反が確定したら、ゴーン容疑者に弁済を求め、ゴーン容疑者が否認したら民事裁判で争い、ゴーン容疑者から弁済が得られたら日産の損害はなくなるから、それで御仕舞です。そうすれば、こんなにマスコミで騒がれることもなく、日産の信用は棄損しなかったし、業績も悪化することはありませんでした。

今回のゴーン事件は、外部から有価証券報告書虚偽記載の可能性を指摘され、責任回避を図った日産の取締役・監査役と、できたばかりの司法取引制度を使って世間の注目を引く手柄を建てたかった東京地検特捜部の暴走です。