ゴーン容疑者は日産の臨時株主総会に出席する

日産は、ゴーン容疑者を取締役から解任する議案を付議する臨時株主総会を4月8日に開催することを取締役会で決定したという報道です。

日経の記事を見ると、まるでゴーン容疑者の有価証券報告書虚偽記載や特別背任に相当する行為が行われたことがその原因のような書きぶりです。つくづくと、新聞は、刑事事件の場合いつも検察側に立ち、その結果多くの冤罪作りの共犯になっていると感じます。今の段階では推定無罪の原則が働き、検察主張を援用するような書き方はすべきではありません。

本件を冷静に評価すれば、ゴーン容疑者は無罪の可能性が高いということは自明のことです。有価証券報告書虚偽記載については、日産でさえゴーン容疑者が受け取っていない約92億円について、2019年第三四半期決算報告で未確定の債務と説明しています。即ち、支払いが確定していないということです。これは、日産の取締役会でゴーン容疑者が受け取る根拠となる日産とゴーン容疑者間のコンサル契約などを承認していないということです。従って、約92億円は、ゴーン容疑者が確実に受け取れるものではなく、有価証券報告書への記載義務は生じていません。この点は、ゴーン容疑者およびケリー容疑者の主張通りです。

また、特別背任罪についても、損失を抱えたデリバティブ取引を一時的に日産に移した行為をもって特別背任の1つとしていますが、これは直ぐに解消しており、日産に損害が発生していないことから、特別背任にはなりません。検察は、背任には損害の発生は不要と言っていますが、企業活動での背任では損害の発生が必須です。また、サウジアラビヤやヨルダンの会社にゴーン容疑者の個人的関係で資金を払ったとして、特別背任に当たるとしていますが、これは相手の会社は否認しており、立証されていません。本来この種の問題は、日産社内で良く調査して、もし事実であれば、ゴーン容疑者に弁済を求めればよいことです。そしてゴーン容疑者が否認したら、民事で争えばよいことです。これをせずに、検察がいきなり介入し、特別背任罪に問うことが異常です。

ゴーン容疑者について、ルノーは、逮捕により業務執行ができないとして、代表取締役の職務は解職(ゴーン容疑者自ら辞任)しましたが、推定無罪の原則が働くとして取締役は解任していません。大変理性的な対応です。一方、日産では、不正行為があったとして、今回臨時株主総会まで開いて取締役を解任します。日産の場合、経営を握る取締役および監査役が司法取引でゴーン容疑者を刑事犯罪人として告発した方ですから、この道を突き進むしかないのでしょう。そうしないと、今後は逆に日産の取締役および監査役が不法行為責任を追及されることになります。

臨時株主総会での承認の可否は、ルノーの態度にかかりますが、本来ならルノーは、推定無罪の原則により、ゴーン容疑者の取締役解任に反対するのが筋です。しかし、どうもスナール会長の取締役就任と引き換えにゴーン容疑者の取締役解任に賛成しそうな雰囲気です。企業は利益追求団体ですから、正義より利益となる行動を取るのは仕方ないのかも知れません。

ただ、一般の株主は、ゴーン事件を冷静に見て、賛否を決めて頂きたいと思います。

さて、今回の日産の臨時株主総会開催決定を受けて、ゴーン容疑者は4月8日の臨時株主総会に出席することになると思います。何故なら、ゴーン容疑者は刑事罰に問われるようなことは何もしていないと主張しており、株主にそのことを訴える必要があるからです。総会決議としては、ルノーが賛成するでしょうから、承認になるでしょうが、結果は別にして、株主総会で自らの潔白を主張しておく必要があります。この行為は、弁明権の行使であり、証拠隠滅にはならないことから、裁判所は出席を認めるのが筋です。しかし、株主総会の混乱の恐れを理由に出席を認めないことも考えれます。