不起訴不当議決は大阪地検のシナリオ通り

3月29日、大阪第一検察審査会は、森友学園への国有地売却と財務省関連文書改ざんを巡る問題で、大阪地検の不起訴を不当とする議決をしたという報道です。

不起訴不当の理由として「本件のような社会的注目を集めた事件では、公開の法廷で起訴する意義は大きい」と述べています。この理由に同意する人は多いと思いますが、ならば議決は、不起訴不当ではなく、起訴相当でなければ意味がありません。

なぜなら、この不起訴不当議決は、大阪地検が書いたシナリオ通りであり、大阪地検の不起訴という結論の追認と同じだからです。

今回の検察審査会の不起訴不当議決は、背任と有印公文書変造・同行使の容疑についてですが、背任については、ごみ撤去費用と売却価格が問題になるので、審査会委員としては、起訴相当とは断定できないと思います。しかし、有印公文書変造・同行使の容疑については、外形上間違いなく、構成要件に該当し、起訴すべきこと疑いのないものです。これを不起訴にしたのは、政府から圧力があったからというのは衆知の事実です。大阪地検が精一杯抵抗したことは、不起訴の前に、有印公文書変造・同公使の最高責任者とされる佐川元理財局長が辞職し、変造があった文書が全面公開されたことから分かります。これは、検察から出された不起訴とする条件だったのです。これにより、起訴し裁判となった場合に、法廷に提出される変造文書が公開され、責任者は辞職により責任を負ったことになり、裁判を行い有罪判決となったのと同じような効果となったことから、不起訴でも良いというわけです。検察が名を捨て、実を取ったとも言えます。この際政府がこれに応じたのは、検察から「不起訴にしても間違いなく検察審査会に申し立てられ、検察審査会で起訴相当議決が出される可能性が大きい。これを不起訴不当議決に留めるためには、佐川元理財局長を辞職させ、変造した公文書を全面公開し、起訴されたのと同等の状態を作り、検察審査会の審査委員から情状酌量を引き出すしかない。」と迫られたからです。

検察と政府は、検察審査会で起訴相当ではなく、不起訴不当議決がなされるためのシナリオを考えており、その通りになったのが今回の検察審査会の不起訴不当議決です。不起訴不当議決になると、大阪地検が再検証し、起訴・不起訴を決めますが、前回の不起訴が検察と政府がせめぎ合って決定した結論ですから、変更することはありません。

大阪地検の不起訴処分については、検察内部からも政治の圧力に屈したという批判があったと思われます。東京地検からは、「大阪地検はだらしない。俺たちなら起訴した。」という声が上がったでしょう。それがゴーン逮捕と言う東京地検の暴走に繋がったと思われます。東京地検のゴーン逮捕は、法律で新しく認められた司法取引を真っ先に使いたいという誘惑と、東京地検(特捜部)の名を世の中に轟かせたいという功名心が重なって起きたものです。これと比べれば、大阪地検の不起訴処分の方がましと言えます。