首長で町の浮沈が決まる時代
4月には、統一地方選挙が実施されます。統一地方選挙は、法律の定めにより、地方自治体の選挙を全国的に4年に1度、4月にまとめて実施するものです。通常、4月の第2日曜日に知事や政令指定都市の市長選挙および都道府県の議員の選挙、第4日曜日にそれ以外の市町村の首長や議員の選挙が行われます。今年は、4月7日と4月21日が投票日になっています(第1と第3日曜日)。
地方選挙の投票率は、前回の平成27年を見ると48%から52%の間であり、国政選挙(直近53~54%)とあまり変わりません。首長は、首相と違って有権者が直接選べるわけで、自分たちの住む地域を良くするも悪くするも自己責任に繋がります。
既に人口減少社会に突入しており、地方自治体の大多数がこの問題に直面しています。現在の特徴として、東京都や神奈川県、千葉県、埼玉県などのような首都圏の人口増加自治体とその他の人口減少自治体の間の格差が広がっているように思います。人口が増えている自治体では税収も増え、更に人が集まる魅力的な政策を打ち出しています。それに対して、人口減少が著しい自治体は、収入減少と住人の高齢化で、政策も新味のない従来踏襲型となっているように思われます。
人口減少型の自治体こそ、旧来型ではない新しい政策を実施する必要があります。現在日本には47都道府県ありますが、経済的序列が固定化し、上位と下位の差が拡大しています。そして、下位の県が上位に行くのは困難な状況になっています。これは、江戸時代以前から続く中央集権制度が原因です。都道府県の配置は、江戸時代とほとんど変わっていません。藩主が知事に呼び名が替ったくらいではないでしょうか。そして、地方自治体は、江戸時代と同じように中央政府から言われたことを忠実に実施しています。これでは、政府に近く政治・経済・文化の中心である首都圏の自治体と、遠隔地域の自治体の経済格差が開くのは当然のことです。
遠隔地域の自治体が首都圏の自治体に追いつき追い越すためには、旧習に囚われない斬新な政策を策定・実施することが必要になります。例えば、教育を例にとれば、義務教育は小学校6年・中学校3年・高校3年(高校無償化により準義務教育)となっているわけですが、これをすべて公立で行うことは、子供の才能の多様性を考えると、有害になってきています。既に東京23区では、私立中学受験割合が約20%に達しています。そして、数は少ないのに私立中高一貫校出身者が東大合格者の多数を占めるようになっています。そしてこれらの私立中高一貫校は、東京などの大都市に集中しています。これは、大都市では、子供の才能を伸ばすのに合理的な私立中高一貫教育がすんなり受け入れられるからです、これに対して地方では、小学校から高校まで公立学校中心であり、私立は公立に劣る認識です。公立中学および高校では、公平・平等な教育が重視され、学習才能に秀でた子供の才能を伸ばすのは困難です。公立学校は、子供の個別の才能を伸ばす教育には向いていないのです。子供の才能を伸ばす教育は、私立学校向きです。私立の才能別の学校を造ればよいし、才能別のクラスを造ればよいのです。今では才能教育の開始時期は中学校になっており、小学校までに子供の才能を発見し、中学校からは才能に応じた教育を受けないと、才能は伸ばせなくなっています。人生の競争の勝敗が中学校段階で決まっていると言えます。東京などでは、学習ばかりでなくスポーツや芸術の才能を伸ばす私立中学が増えていますが、地方では殆どありません。これでは、地方の才能ある人材は育たず、地方の凋落傾向は強まるばかりです。このよう現行制度の枠組みのなかでも、地方自治体でできることはたくさんあるのです。 地方自治体が新しい政策を策定・実施できるかどうかは、首長にかかってきます。その地域の有力者=ボスを首長に選べば、これまでと変わらないことになります。この人口減少社会においては、旧習を打ち破れる首長が求められています。今度の統一地方選挙の結果で、今後浮上する自治体と沈没していく自治体が決まってくると思われます