熊本の次のテーマは「熊本城民営化」

熊本では熊本の骨格を変える政策が進められています。県南については、八代港でクルーズ船専用岸壁や旅客ターミナル、集客施設を整備し、年間200回の寄港を可能とするということです。また、熊本空港についは、民営化の手続きが進められ、3月に三井不動産を代表者とする事業グループを優先交渉権者に選定しました。5月に実施契約を締結し、7月からターミナルビルの民営化が始まり、2020年4月から完全民営化となる計画のようです。熊本空港民営化で最大の懸案であった空港へのアクセスについては、空港とJR豊肥線三里木駅間に鉄道を敷設することが決まりました。熊本空港へのアクセスについては、これまでバスしかなく、普通でも約1時間かかることから、便利な空港利とは言えませんでした。九州の多くの空港は、県庁所在地の中心部からのアクセスに課題を抱えていますが、熊本空港が一足先にこの課題を解決することになります。しかし、九州で1人勝ち状態の福岡は、商業・ビジネスの中心の天神から地下鉄で僅か15分で到着できる場所に福岡空港があり、圧倒的便利さを誇っています。鉄道ができても熊本空港と熊本駅までは約40分かかり、福岡空港との差は大きいものがあります。直通電車を走らせるなど更なる時間短縮が望まれます。

それでも、熊本空港とJR豊肥線を結ぶ鉄道を敷設することになったことは、画期的なことです。この話は、これまでも可能性の話としてありましたが、だれも実現できるとは思っていませんでした。それは、それまでの知事に本気でやろうという人がいなかったからです。空港からJR豊肥線までは、田畑が多く鉄道用地は取れるので、鉄道の敷設には、物理的障害はなかったのです。資金の問題はありますが、最大の障害は、県庁トップの意識にあったということです。

熊本県は、2016年4月の熊本地震からの復興のテーマとして、「創造的復興」を掲げていますが、だんだん形になって来ているように思います。

しかし、全国的には中位の自治体である熊本が上位に行くには、これだけでは足りません。そこで私が次のプロジェクトとして提案するのは、「熊本城民営化」です。熊本城は、2016年4月の地震で、城郭は破損し、石垣の多くが崩落しました。城郭については、2019年10月までには大天守の外観を復元、一般公開を再開し、2021年春には完全に復旧するということです。しかし、石垣が完全に復旧されるのには、あと20年近くかかる計画だそうで、気が遠くなります。

熊本城は、2016年の地震の前に2回(1625年、1889年)大きな地震に見舞われ、石垣が崩落しています。2016年の地震で崩落した石垣の多くは、過去の地震の際に積み直された石垣という報道もあります。まだ崩落していない石垣についても、たわみやゆがみ、膨らみが出来ている部分が多いことから、今後積み直しが必要になると思われます。こうなると、熊本城の石垣は、ほぼ積み直したものとなり、歴史遺産性は低いものとなります。地震前の城郭も1960年に鉄筋コンクリート造りで外観復元されたもので、歴史遺産性は低いものでしたし、新しく外観復元される城郭も同様です。歴史遺産性があるのは、宇土櫓など重要文化財に指定されている13棟ですが、この多くも2016年の地震で大きな被害を受け、復元が必要になっており、歴史遺産性は低下しています。このように、熊本城は、築城当初の天守が残る姫路城や彦根城、犬山城、松本城などの現存12城と比べると、歴史遺産性は低くなっています。

従って、これまでのように歴史遺産性に縛られた活用ではなく、もっと熊本の活性化に役立つような活用を考えた方が良いと思われます。それが特別史跡の制限を緩和し、熊本城の敷地を含む全ての運営を民間に任せる「熊本城民営化」です。地震からの復旧工事を進めながら、天守の拝観料や城彩館の運営、二の丸広場やその他の城内の敷地の利用を全面的に民間企業に委ねます。その結果、運営を委ねられた民間企業は、二の丸広場にカフェやレストランなどの飲食施設や時代劇などの劇場、天守を間近に見れる高級宿泊施設を造ったり(木造)、その他の曲輪跡、広場に遊戯施設を造ったりして、集客に努めます。熊本城の戦国テーマパーク化です。これにより、これまで最高200万人程度だった入場者数を、海外からの旅行客を中心に2,000万人程度まで増やします。もちろん歴史的価値のあるものは大切に保存しますし、分配される利益は、それらの保存費用に充てるとともに、痛んだ石垣の積み直し費用にも使います。また、100年後の地震に備えて修復積立金として積み立てます。こういうことをしないと、人口減少が進み、使える予算が少なくなる中で熊本城をよりよい形で残していくのは無理です。「熊本城民営化」も物理的障害は何もなく、障害(規制も含め)は人の意識の中にあります。これができるかどうかが今後の熊本の盛衰を左右することになると思います。他所がやらないことをやらない限り、熊本の発展はありません。