ドコモの露骨な偽装値下げ、裏にマッチポンプ総務省の存在
4月15日、NTTドコモが携帯電話料金の値下げを発表しました。その内容を見ると、家族割引などを適用しない場合や利用データ量が少ないプランの場合は、KDDIのプランと同水準で、大容量プランではソフトバンクのほうが安いということですから、キャリア3社の収益が殆ど影響を受けないよう露骨に偽装された値下げです。ドコモは、KDDIとソフトバンクが売りとするプランを犯さないことで、3社の協調体制を維持すると言うメッセージを送ったのです。当然ドコモは、総務省と事前にすり合わせをしているでしょうから、このドコモの偽装値下げは総務省の了承のもとに行われています。総務省は、表向き電気通信事業法の改正などでキャリア3社に携帯料金の値下げ迫っているように見せかけて、裏では「そんなに値下げしなくていいよ」と言ってキャリア3社に恩を売っているのです。いわゆるマッチポンプです。
ドコモの今回の値下げでは、利用量の多いユーザーの料金を下げ、利用量の少ないユーザーの料金は下げていませんので、利用量の多い契約に誘導しようとしていることが分かります。最も安いプランは、家族割りなどが効かない人では月2,980円ですから、持っているだけで2,980円かかることになり、ドコモぼろ儲けの料金体系となります。ドコモは、今回は最大4,000億円の値下げとなると言っていますが、高単価契約へ誘導していることから、殆ど減収にならないと思われます。多少利益面で影響を受けても、営業利益1兆2,000億円(2019年3月期予想)が1兆円に下がるくらいで、営業利益率も20%くらいを維持すると思われます。KDDIやソフトバックは、ドコモのこの値下げを見て「さすがドコモ。仲間だけのことはある。」と安心したはずです。
キャリア3社は、これまでも総務省と相談の上、総務省の行政指導を利用して逆に家計収奪を強化してきました。キャリア3社は、本質的に強欲であり、公共インフラを担っているという意識がありません。そこが同じく公共インフラを担っている電力やガス、鉄道会社と違うところです。その証拠にドコモは、解約できないようして高収益を維持する仕組みである2年縛り契約は維持するとしています。ドコモにとって、ユーザーは奴隷なのです。2年縛り契約を認める限り、この状態は変わりません。
政府は、一度キャリア3社の収益構造をぶっ壊す必要がります。その為には、通信回線の保有からは利益が得られない仕組みにする必要があります。電力のように、通信回線を別会社で保有さるなどコストを透明化し、通信回線は、通信サービスを実施する全企業が安価な料金で公平に利用できるようにする必要があります。これを実施しない限り、キャリア3社の家計収奪は終わりません。
菅官房長官が携帯料金値下げを言い出した主旨は、キャリア3社の営業利益約3兆円、営業利益率約20%という公益企業にあるまじき家計収奪の是正にあり、電力会社並みの営業利益率約5%まで値下げする必要があります。このためには約5兆円の値下げが必要です。そうしない限り、消費税2%の増税で約5兆円の出費増となる家計を救えないし、消費の落ち込みを防げません。こう考えれば、ドコモの値下げが論外であることは明白です。
今年10月から通信回線を保有しキャリアとなる楽天の三木谷社長は、こうしたキャリア3社が契約者やMVNOを奴隷化するやり方を見て、「携帯電話の民主化活動」を宣言し、2年縛りもやらないと言っています。楽天は、設備投資も安価であり、安価な料金を設定するとともに、通信回線を安価な料金で多くのMVNOに提供すると思われます。
今後KDDIやソフトバンクも今回のドコモの値下げに沿った値下げをしてくるでしょうが、実質的にはドコモと同じくキャリア3社の収益にほとんど影響を及ぼさない偽装値下げになると思われます。この強欲3兄弟の結束は固いものがあります。契約者はその実体を見抜き、キャリア3社から楽天やMVNOに契約を切り替える必要があります。そして政府は、この切り替えを可能にするため、2年契約などの縛り契約を禁止する必要があります。楽天の三木谷社長は、総務省が新規参入する楽天には端末と通信料のセット割を認める方針との報道に対して、「携帯電話の民主化活動を掲げているので、話があってもやらない」と男前な発言をしています。政府も三木谷社長のこの男気に答える必要があります。もし政府がこれをしないとすれば、政府(特に総務省)はキャリア3社とグルと思われても仕方ありません。このままキャリア3社の家計収奪を許せば、日本の家計はやせ細ります。