ドコモの利益は電力会社9社分、これが公益企業?

4月19日に日経電子版に、NTTドコモの2019年3月期の連結営業利益が約1兆円と昨年を上回り15年ぶりの高い水準となる模様との報道がありました。普通に決算をすればこんなものではなく、儲け過ぎ批判を気にして、相当利益隠しをしたようです。昨年12月までの第3四半期決算は、営業収益3兆6,541億円、営業利益9,020億円(営業利益率24.7%)でしたから、単純に計算したら2019年3月期の営業利益は1兆2,000億円程度になるはずです。第4四半期中には料金値下げは行っておらず、減益要因はありません。日経の報道通り、2019年3月期の営業利益が約1兆円だとすれば、第4四半期の営業利益は1,000億円だったことになります。第3四半期までは毎期約3,000億円の営業利益だったのに、第4四半期になったら1,000億円の営業利益というのは誰が見ても不自然です。相当利益隠しのための決算操作を行ったと見るべきです。例えば、設備を一括償却した、携帯端末と通信費との分離を見越し携帯端末在庫の減損処理を行った、販売店に多額の奨励金を支給した、多額の広告費を使ったなどが考えられます。そうでない限り、それまで四半期約3,000億円あった営業利益が第4四半期には1,000億円になることは不可能です。もし第4四半期の営業利益が通常ベースだとすれば、来期の営業利益は4,000億円前後となるはずですが、日経の報道では約8,000億円前後とされていることからも、この第4四半期の約1,000億円の営業利益は異常値であることが分かります。

日経の報道では、来期の決算は通信料金の値下げにより約2割前後の減益となる予想であり、減益となれば5年ぶりのことと減益に注目していますが、注目すべきは余りにも少ない減益幅です。この3月期のドコモの営業利益約1兆円は、電力9社の昨年決算の営業利益の合計約9,800億円を上回ります。ドコモの営業利益率は第3四半期で24.7%(決算予想の営業利益は、決算操作されたものであり不適。)ですが、電力9社の昨年決算の営業利益率は約5%です。如何にドコモが儲け過ぎているか分かります。

菅官房長官が昨年8月「携帯電話料金は4割下げる余地がある」と発言し、携帯電話3社(ドコモ、KDDIおよびソフトバンク)の儲け過ぎがクローズアップされ、通信料金値下げの議論が始まりましたが、菅官房長官の値下げの1つの根拠は、日本の上場企業平均の営業利益率が約6%なのに携帯電話3社の営業利益率は20%を超えていることでした。電波は国民の資産であり、携帯電話は国民の生活インフラです。携帯電話3社の今の利益は、生活インフラであることを利用して家計から収奪している状態であり、社会通念上許されないということでした。この趣旨が分かっていれば、ドコモの適正な利益水準は明らかです。電力会社並みの営業利益率5%の水準です。値下げにより現在4兆8000億円程度の営業収入を3兆億円程度に落とし、営業利益約1,500億円というのが許されるところです。これでも立派な利益水準です。これから考えると、4月16日にドコモが発表した値下げが如何に菅官房長官の意図とかけ離れているか分かると思います。ドコモは、最大4割の値下げと言っていますが、ドコモ自身せいぜい2,000億円くらいの減益に留まると考えていることが分かります。あの値下げ案では、通信量の大きい契約の料金を下げて、通信量の小さい契約の料金は下げていないので、ユーザーを通信量の大きい契約に誘導し、ユーザー当たりの利用料金を上げようと企図しています。この目論み通りになれば、20%の減収どころか決算操作で圧縮した今期並みの1兆円の営業利益も可能です。

このようにドコモには、公益企業として家計を収奪してきたことに対する反省が全くありません。携帯電話3社がこれまでに家計から収奪した金額(営業利益20%と5%の差の15%部分)は、10兆円以上となります。この分家計は苦しくなり、節約を重ねてきました。だから、食品や衣料品の値下がりが続き、新聞の購読率が下がったのです。そして今年の10月からは、消費税2%の引き上げです。この金額は約5兆円であり、この分携帯電話3社の営業収入を減らし、家計に資金的余力を与える必要があります。

菅官房長官が指摘した「携帯電話料金は4割の値下げ余地がる」とは、携帯電話3社の営業収入の合計約13兆円の4割、5兆円のことであり、消費税引き上げ額に相当します。これだけ下げても携帯電話3社はまだ黒字でやって行けます。これは菅官房長官の家計の側に立った見識であり、日本の家計の破綻を救うものです。これは何としても実現する必要がります。