日産ショックが日本経済変調の引き金となるかも

4月19日の日経電子版で、日産は2019年度の世界生産台数を前期より約15%少ない460万台程度に設定する計画との報道がありました。これに対して日産は直ぐ否定する声明を出したとのことです。日産が慌てて否定声明を出すのは当然です。この数字が事実だとすれば、日産の生産拠点のリストラが必要となり、国内工場を初めとして日産の日本人社員も無傷ではいられないことになるからです。それも元会長で日産の救世主であったカルロス・ゴーン容疑者を日産の日本人経営陣がいっしょになって追放した直後にこうでは、日本人経営陣は立つ瀬がありません。日産の信用不安につながり、6月の株主総会では厳しい追及にあうこと間違いありません。

日産は否定しましたが、日産社内で起こり得る最悪のケースとしてこの数字が出ていることは事実だと思われます。この数字は、ゴーン容疑者を検察に逮捕させ追放した経営陣にとっては、その行為の責任を追及されることになることから、今後日産から正式に発表されることはないと思われますが、現実化しても不思議でない数字です。

北米日産の2019年1月~3月の販売台数は、前年同期比12.1%減少しています。量販車の減少が大きいので、ゴーン逮捕により北米日産の幹部が流出し、販売力が低下していることが予想されます。日産では、世界販売戦略担当のダニエル・スキラッチ副社長が近々退任することが決まったとの報道ですし、少し前には、日産で北米や中国の販売責任者を務めていたチーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)のホセ・ムニュス執行役員も辞職していますから、世界販売体制はガタガタの状況だと思われます。ムニョス氏は、韓国現代自動車のグローバル最高執行責任者(COO)に就任するという報道ですから、ムニョス氏が北米日産や中国日産で一緒に仕事をした幹部を引き抜くことも予想され、日産の世界販売体制は更に弱体化することが予想されます。この販売体制の立て直しは容易ではなく、再構築には時間がかかることが予想されます。これまでの日産の世界販売体制は、ゴーン容疑者が引き抜いてきたスキラッチ氏、ムニョス氏などの外国人幹部によって支えられており、これに代わる日本人人材は不在であり、外国人幹部を招聘するにも、ゴーン容疑者を検察に逮捕させた日産に来る優秀な外国人人材はいないと思われます。

従って2019年度の世界販売台数が大幅に減少することは確実であり、その底は見えない状況だと思われます。こうなると生産拠点のリストラが不可欠となり、当然日本国内工場のリストラも必要となります。このような状況は、ルノーにとっても看過できるものではなく、4月22日の報道によると既に日産に経営統合を提案したということです。日産は拒否する意向とのことですが、解決策もないのに拒否だけ言うのは、駄々をこねる子供のようです。4月、5月の世界販売の状況によっては、ルノーは6月の株主総会に経営統合の株主提案をしてくることも考えられます。そうなれば、可決される可能性が大きいと思われます。その後日産の大リストラが始まります。最終的には、「かって日産と言う会社があった」というくらいに解体されるはずです。

日経の前記の報道(日産の2019年度の世界生産台数は、約15%減少して460万台程度になる計画)は、これが現実となり日産の国内工場のリストラが始まれば、これを契機として日本経済が変調をきたす可能性があり、スクープと言ってよい報道だと思います。