ドコモ1人負けの予感
ドコモの2019年3月期の決算は、営業収入4兆8,408億円、営業利益1兆136億円、営業利益率20.8%となったとのことです。2018年12月の第3四半期決算通期で営業収益3兆6,541億円、営業利益9,020億円、営業利益率24.6%でしたから、3カ月毎の営業収入は約1兆2,000億円、営業利益は約3,000億円であり、これからすると2019年3月期の営業利益は1兆2,000億円、営業利益率約25%の水準になるはずです。これだと儲け過ぎという批判が高まることが予想されるため、営業利益を約2,000億円圧縮したようです。設備の前倒し償却や端末の評価減、販売店への奨励金の増加、広告費の大量投入などを行ったことが考えられます。このお金の出どころである家計が遣り繰り算段していることを考えると腹立たしい限りです。
ドコモは4月16日に最大4割という値下げプランを発表しましたが、これは偽装値下げそのものでした。これは公約の4割値下げの部分を入れながら、できるだけ減収にならないよう練りに練られたプランです。大量通信ユーザーほど有利になっていますから、大量通信契約を増やし、契約単価を上げることに依って減収にならないようにすることを狙っていると思われます。
携帯キャリア3社は、これまで携帯電話という生活インフラを悪用して家計から収奪するという公益企業にあるまじき行為を行って来ました。これは、ドコモを中心としてキャリア3社が似通った料金体系と契約体系を採用することによって、どこと契約しても変わらない状況を作り出すことによって実現したものです。
しかし、その仕掛け人と思われるソフトバンクの孫社長は、菅官房長の「携帯電は4割値下げする余地がある」発言や楽天携帯電話参入などの動きを受け、携帯電話で今までのように儲け続けることは困難とみて、携帯電話事業を行うソフトバンクをソフトバック・グループから分離し、あっという間に株式公開させました。この株式公開でソフトバンク・グループが調達した資金は2兆5,000億円であり、今後携帯電話事業で減益となる利益の10年分以上を確保したものと思われます。これにより孫社長は、今後楽天などとの激しい値下げ競争に真正面から立ち向かう覚悟だと思われます。KDDIもいずれこの状況になることは以前から予想しており、そのため通信の周辺事業会社を買収し、非通信分野の強化に努めてきました。KDDIに比べるとソフトバンクは非通信分野の強化が遅れているように思われますが、その分野はヤフーが担っており、将来的にはヤフーとソフトバンクを合併させる構想だと思われます。4月26日に発表されたヤフーのZホールディングという持ち株会社への移行は、そのための布石と考えられます。ソフトバンクとヤフーが一緒になれば、通信と非通信分野を合わせてトップに躍り出ます。
新規参入する楽天は、非通信新分野が本業であり、通信は非通信分野のインフラに過ぎません。通信は、ネットによる楽天経済圏拡大には不可欠のインフラという位置付けです。従って、これまでのキャリア3社のように通信で大儲けをする気はまったくありません。安い料金で個人に携帯電話サービスを提供し、楽天経済圏に取り込むと共に、通信回線をMVOに低価格で提供し、MVOとその契約者を楽天経済圏に取り込んで、楽天経済圏の拡大を図ってきます。従って、ソフトバンク+ヤフー、KDDIおよび楽天は、同じビジネスモデルで真っ向から競争することになります。
ドコモは、これまでの3社協調の構図が変化したこと(ゲームチェンジ)にまだ気付いていないようです。その証拠に4月16日の値下げプランでは、大容量通信プランではソフトバンクの料金より安くせず、少容量通信プランではKDDIの料金より安くしないようにして、今度とも3社で協調するよう呼びかけたものと思われます。しかし、KDDIとソフトバックは、ゲームチェンジに気付いいていますので、今後はドコモの料金プランと足並みを合わせるのではなく、楽天と真っ向から勝負する料金プランを出してくるはずです。
これにより今後お殿様気質のドコモは、KDDI、ソフトバックおよび楽天の競争について行けず、1人負けになる予感がします。