公立トップ高校から私立進学校への流れは止まらない
今年の東京の公立高校の入試で、公立高校トップの進学実績を誇る日比谷高校で、二次募集を行うということで話題になりました。これまでの経験から、定員254名のところ辞退者を見越して270名の合格者を発表していたということですが、21人の辞退者が出て、5名の定員割れが生じたようです。5名の定員割れくらいなら、次点者に連絡して穴埋めすればよさそうですが、さすが日比谷高校です。
日比谷高校と言えば、昔は東大合格者トップだったこともありましたが、1969年に学区制を敷いたことから凋落しました。2003年に学区制が撤廃され、東京都の進学指導重点校に指定されて進学教育に力を入れたことから、最近東大合格者が全国の公立高校トップになっています。こんな日比谷高校に合格したら、喜んで入学するのが普通で、これだけ辞退者が出るとは考えられないことだったようです。
辞退者はどうも、日比谷高校と前後して入試があった私立の進学校に進学したようです。これは、私立高校の授業料が無償化されたことが原因と言われています。それでも現在の東大進学者数なら日比谷高校が上なのに、なぜ私立の進学校に流れたのでしょうか?
よく考えれば、現在の進学実績では劣っても、私立の進学校の方が進学教育体制が充実していることが分かります。公立高校の場合、生徒を平等に扱うことが重視され、能力別クラス編成さえ実施しない学校が多くあります。また、勉強には興味ないない生徒と医学部や東大に行きたい生徒を同じクラスとしている学校もあります。一方私立の進学校では、勉強のできる中学生を授業料無償の特待生として入学させ、特別進学クラスを作り、難関大学入学のための特別授業を実施します。私立の中高一貫の進学校では、難関大学合格から逆算した6年間の教育計画をたて、同じ教師が6年間持ち上がりで指導する体制ができています。一方公立高校では、持ち上がり制を取っていても長くて3年間であり、かつ教師は3年程度で移動しますから、指導に一貫性がなく、また教師の能力やノウハウにバラツキが大きいという現実があります。日比谷高校の場合は、私立の進学校に近い体制がとられているようですが、私立程には徹底できていないと思われます 大阪桐蔭高校や青森山田高校などは、高校野球で甲子園に出場する強豪校ですが、その他のスポーツも強く、また大学進学実績でもすばらしい実績を上げています。これらの私立高校の特色は、生徒の才能を伸ばす教育をしていることです。生徒は、勉強ができる子、スポーツが得意な子、音楽や美術の才能が突出している子など、それぞれ才能が違います。私立高校は、その子の才能を伸ばす教育をしていると言えます。一方公立高校は、普通科が多いことから分かるように、勉強中心であり、それも真ん中のレベルに生徒に合わせた教育です。これでは、それより上位の生徒の才能を伸ばすことはできません。従って、授業料などの費用が同じなら、より自分の才能を伸ばす環境が整備された私立の進学校に行くと言うのは、当然の判断です。地方の場合、地元のトップ高校は、古くからの伝統を持つ公立高校であることが多いですが、これからはここに行っていた生徒が、教育環境が充実した私立の進学校に行くようになると思われます。