定年退職後登山を趣味にするのは危険
少し前から定年退職後に登山を趣味にする人が増えています。近くの低山の登山なら体力造りに役立ち、持て余す時間を消費するには良い趣味だと言えます。しかし、低山に登れば次はそれより高い山となるわけで、知らず知らずのうちに日本百名山のような山に上り始めることになります。山も1000mを超えるとかなり危険な場所が出てきます。ちょっと気を抜いたら滑落して大怪我を負ったり、運悪く死亡することも起きます。5月の10連休中にも北アルプスでは10名近い登山者が死亡したのではないでしょうか。その中には高齢者も見られます。
定年後登山を始めると、登山をするごとに体力が付いて来たことが分かり、もっと上級の山を目指すようになります。最初は崖に面した側は歩かないとか、狭い道の場合には広い場所で待って離合するとか安全の基本を守るのですが、魔が差す瞬間があってその基本を守らない時があり、それで命を落とすことが多いと思います。私も50代後半から山登りを初め、最初は近くの飯盛山(384m)から始め次は油山(597m)、そして宝満山(829m)、背振山(1,054m)と近くの山を登り、その後九重連山(最高峰は1791m中岳)へと歩を進めました。九重連山では大船山から下山する際に人1人しか通れない崖に面した傾斜のきつい登山道で、先を急いで崖側のわずかなスペースに身を寄せ、登りの登山者と離合しようとしてバランスを崩し、垂直な崖下(30m)に転落しそうになりました。その際は、真ん前に居た女性の登山客がステッキを出してくれたため転落を免れましたが、今でもあの時転落死していてもおかしくなかったと思い出します。その後は登山の前には安全の基本事項を復唱し、それを厳守するように心掛けましたが、やはりヒヤッとする場面は何回かありました。登山での死亡な自己責任であり、報道されないものも多数あり、実際の死亡者は報道されている数より相当多いと思われます。
これから分かるように、定年退職後の登山は危険を伴うものであり、あまり良い趣味ではないと思います。それよりも整備されたトレッキングや歴史街道歩き、街歩きの方が危険がなく、健康的です。これからはこちらが盛んになるのではないでしょうか。尚、70歳を過ぎたら登山は止めた方がよいと思います。体に負荷をかけても大丈夫な健康年齢は70歳までです。
私の登山歴は、九重連山から小さい頃からの夢だった富士山に登って、そこで終止符を打ちました。富士山登山では、一緒に行った友人が8合目の山小屋(3,200m)でビールを飲みこむら返りを起こしたため、頂上へは登れませんでした。何かあった場合に備えて一緒に行ってもらったので、行動を共にするのは当然であり、残念と言う気持ちは全くありませんでした。山では何が起こるか分からず、単独登山は危険だとつくづく思いました。登山を止めて見ると、あんなきついもんよくやっていたなという感じです。