菅官房長官の発言をせせら笑うソフトバンク
ソフトバンクの2019年3月期の決算が発表されました。売上高は過去最高の3兆7,463億円、営業利益も過去最高の7,194億円でした。営業利益率は19.2%です。トヨタの営業利益率が8.1%ですから、ぼろ儲けの状態です。業界3位でこの状態は、競争回避行為がない限り実現しません。携帯キャリア3社が話し合っているとは言いませんが、お互いに値下げ競争をせず、共に高い利益が得られるようにしようとの共通認識があるはずです。通常3社ある業界では、1位がダントツの利益、2位は大きく引き離され万年2位の利益、そして3位はカスカスの利益と言う状態です。携帯キャリア3社の場合、1位のドコモが営業利益約1兆2000億円(四半期ベースで営業利益約3,000億円)、KDDIが約1兆円、そしてソフトバンクが約7,000億円であり、異常としか言いようがありません。
携帯電話は社会インフラであり、携帯電話事業は公益事業です。それは元々国営の電電公社が担っていた事業であることからも明白です。これが民営化されたのは、料金を下げて家計の負担を軽くすることが目的でした。しかし携帯電話では民営化の結果、家計の負担が重くなっています。国営のままならまずこのような利益率となる料金設定はしていません。携帯電話と同じ性格をもつ電力会社の営業利益率は約5%です(2018年3月期。9社合計)。9社合計の営業利益額は約9,800億円であり、ドコモ1社より少ない状態です。これを見れば、携帯キャリア3社が公益企業の使命を忘れて、家計収奪に走っていることがよく分かります。
電波は国民の財産で携帯キャリア3社にはその利用権が付与されているだけですから、家計収奪に走らないよう携帯キャリア3社は総務省の所管の下にあります。電力会社が経済産業省の所管の下にあるのと同じです。電力会社については経済産業省が公益事業性を徹底させ、儲け過ぎに走らないように見事に管理しています。一方携帯キャリア3社については、総務省は家計の負担を抑える方向ではなく、携帯キャリア3社の利益を極大化することを指向していたことは明確です。それもそのはずです。総務省内での管轄部署は旧逓信省の流れを汲んでおり、携帯キャリア3社とくにドコモとは水と魚の関係にあるのですから。その結果、総務省が中心となって携帯キャリア3社の儲け過ぎの構造を作り上げたと言ってよいでしょう。そしてその中心となった官僚は、退官後携帯キャリア3社から巨額の広告費が流れ込む大手広告代理店に天下っています。癒着の構造の典型的なパターンです。
それと公正取引委員会の不作為も今のキャリア3社の家計収奪を生んだ要因です。携帯キャリア3社の利益状況および取引の仕組みを見れば、競争阻害状態にあるのは明白です。それも家計が被る損害が巨額なことから、何はさておき是正する必要がありました。それを公正取引委員会は放置し続けたのです。哭かない番犬どころか職務放棄の状態でした。その結果、携帯キャリア3社は巨額のお金を家計から収奪し続けることが可能となりました。
5月10日電気通信事業法改正案が国会で成立し、今後は携帯電話料金の値下げが始まると言われていますが、ドコモが発表した値下げ案やソフトバンクの宮内社長の発言を聞くと、実感できる値下げは実現しそうにありません。ドコモの新料金案では、大容量契約プランではソフトバックの現行の料金より安くせず、小容量契約プランではKDDIの現行の料金より安くしないなど、競争する気はないことが分かります。相互不可侵、協調体制の堅持を呼び掛けているようです。それを受けてソフトバックの決算発表の席で宮内社長は、値下げの質問に対して「今の料金体系でも十分安い」として料金の微修正はあるかも知れないが大幅な値下げは考えていないと発言しています。営業利益7,194億円、営業利益率9.4%が十分に安い料金の結果でしょうか?アメリカでソフトバンクと同じような地位(業界4位)にあるスプリントは、2019年3月期決算のうち第3四半期および第4四半期連続で赤字でした。これが競争がある業界における3,4位の正常な状態です。
ソフトバックは、菅官房長官の見識のある発言をせせら笑っているように見えます。こういう企業に通信免許を付与してはいけません。家計を苦しめる企業は速やかに退去させるべきです。