日産西川社長不起訴処分なら、検察審査会に申立を

前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴された事件で、東京都の男性が日産の西川広人社長も同罪であり起訴すべきとして刑事告発していましたが、東京地検特捜部は4月26日に不起訴処分にしていたことが関係者の話で分かったとの報道です。ゴーン容疑者は有価証券報告書に約91億円の報酬を過少に記載していた容疑を掛けられていますが、もしこの容疑で起訴するのならば、西川社長は少なくとも共同最高経営責任者(CEO;代表取締役副会長)となった2017年11月または単独のCEO(代表取締役社長)となった2017年4月以降については、責任があることは明確です。ゴーン容疑者は、過少に記載したされる約91億円についてまだ受領しておらず、将来コンサルティング契約などの報酬として受領する計画だったということですが、過少記載というならば、このコンサルティング契約などが日産の取締役会で承認され、日産として支払い義務が確定している必要があります。しかし、日産の取締役会で承認されていたという報道はありませんし、日産の取締役会が承認するわけがありません。承認していたら取締役会が過少記載を認めていたことになり、取締役の責任問題になります。こんな明確な違法行為をやるわけがありません。

日産は2019年第3四半期決算でこの91億円について未払い債務に計上しましたが、これは既に支払いが確定したものではなく、将来支払う可能性がある債務として保守的に計上したと説明しています。即ち、支払は確定していないということであり、ゴーン容疑者の説明と一致しています。ゴーン容疑者は本来自分の年間報酬は約20億円が適当と考えていながら、日本で高額報酬と批判されることを気にして約10億円に留め、差額を別の形で受領できないかいろいろ検討していたことは事実のようです。その支払い方法に関するゴーン容疑者と西川社長の署名がある契約が存在するという報道です。このことは西川社長の関与の大きさを証明しています。しかし、これについては取締役会の承認がなく、会社としての日産に支払い義務は生じていないようです。従って、ゴーン容疑者の報酬は支払われた実額のみということになり、有価証券報告書には正しい金額が記載されており、虚偽記載はなかったことになります。即ち、ゴーン容疑者にも法人としての日産にも、また西川社長にも有価証券報告書虚偽記載罪は成立しないことになります。これが常識的な結論です。

有価証券報告書虚偽記載罪については、帳簿や取締役会議事録を照査すれば解明できることであり、司法取引により日産の取締役や監査役の証言を必要とするものではありません。従って、有価証券虚偽記載罪について司法取引をする必要はなく、司法取引を理由に起訴を免除することはおかしいのです。西川社長の不起訴処分の理由が司法取引ならば不当ということになります。

今回の事件の内有価証券虚偽記載罪については、最近すっかり報道されなくなりました。何故かと言うとこの事件では損害は発生しておらず、被害者がいないからです。ゴーン容疑者は本来なら年間約20億円の報酬が適切と考えていながら、社会的批判を気にし約10億円に留めたことにより、日産は約91億円得をしています。会社に損害が発生せず、逆に会社が約91億円も得をしているのに、有価証券虚偽記載罪で逮捕・起訴するなどありえないことで、ゴーン容疑者の逮捕・起訴は不当なのです。従って、本来ならゴーン容疑者の起訴について検察審査会に審査を求めたいところですが、起訴の判断は検察の専権事項となっており、できません。ならばゴーン容疑者を起訴するのなら、西川社長も起訴すべきとは言うのは当然の考え方です。検察は日産の取締役および監査役と司法取引を実施し、その中に西川社長も入っていると思われますので、不起訴処分にしたのは予想通りですが、ならばこれも予想通り検察審査会に対して西川社長に対する不起訴不当の審査申立がなされると思われます。

検察審査会は、ゴーン容疑者の起訴が不当であり、西川社長の不起訴処分は問題ないという結論を出すのではないでしょうか。