「1つの公約の党」は生活者の要望を実現する唯一の形
今年の統一地方選挙で「NHKから国民を守る党」が26議席を獲得し、ニュースとなりました。こんな地方自治とは関係のないテーマを掲げた政党が議席を増やしたことに驚いた人も多かったようです。
確かに一昔前までなら、こんな地方自治とは関係がないNHK受信料問題を取り上げた党が地方議会で議席を獲得することはなかったと思われます。しかし、NHK受信料は多くの矛盾を抱えており、社会問題の一部を占めていることを考えれば、この程度の議席を獲得することは当然であり、昨年初めくらいからその兆候は見えていました。
この政党が議席を増やした最大の原因は、NHK受信料問題が社会のかなり大きな問題になっていることです。NHK受信料は、NHKを見る見ないに関わらず受信契約を結び、払わないといけないと放送法で決められているものです。見ないにも関わらず契約を結べと強制することは、当事者の意志の一致によって成立するという契約の考え方と矛盾します。従って、これは実質的には契約に基づく支払い義務ではなく、NHKの維持負担金という性格のものです。即ち、税金なのです。ならば所得応じて負担するのが道理ですが、所得に関係なく一律同額(月2,230円)負担となっていることから、高所得者には何でもない負担でも低所得者には重い負担となっているのです。そこで契約を結べ結ばないや、受信料を払え払わないでトラブルになっているのです。このようにNHK制度には、契約および負担の面でごまかしがあります。その結果、見てないから絶対に払わないと言う人とお金が無くて払えないという人が出てきます。それが不払い率18%という数字になって表れています。これは世帯数では約900万世帯であり、有権者に換算すると約1,350万人程度になると考えられます(不払い1世帯1.5人の有権者がいると想定)。全有権者の10%以上に当たり、これらの人たちが全員「NHKから国民を守る党」に投票すれば、各議会で全議員の10%以上を占めてよいことになります。現在の得票率は2%強なので、得票率は今後もっと伸びることは確実だと思われます。NHK受信料に不満だけど払っている人が不払い者と同数以上いると思われますので、「NHKから国民を守る党」の潜在的支持者は3,000万人程度いると考えられます。従って、国政に進出した場合、旋風を巻き起こす可能性があります。
このような1つのテーマ(公約)を掲げた党については、ワンイシュー党とか名づけて軽視する傾向がありますが、それは間違いです。現在の自民党や野党が掲げるマニュフェストは、頭のいい人が書いた模範答案みたいなもので、総花的であり本当に実現する気があるのか分かりません。マニュフェストのトップに挙げられながら実現されなった公約もたくさんあります。しかし、「NHKから国民を守る党」のように1つの公約(NHKを見ない人にはスクランブルをかけ、受信料は徴収しない。)を掲げる党は、多数の議席を得たら必ず公約を実現します。従って、生活者が本当に変えたい問題があればその問題の解決を公約に掲げて政党を作り、その党に投票するのが解決の早道です。
このように「1つの公約の党」は生活者が自らの要望を勝実に実現する唯一の形です。江戸時代の農民一揆や庶民の米一揆に似ています。NHK受信料だけでなく、現在携帯電話料金問題の解決にも有効です。この問題の本質は家計の負担を減らすことですが、携帯キャリアのプランでは4割値下げと言いながら、携帯キャリアの営業収入(家計の負担)は減らないか、むしろ増える計画になっています。見事な議論のすり替えであり、このまま自民党政府に任せていても家計負担の減少は実現しそうもありません。ならば「携帯料金値下げ党」を作り、賛同者に投票して貰えばよいのです。多くの家計が賛同者であり、国会に多くの議員を送り込み法律を制定して値下げを実現できます。また、日本では非正規社員が就労者の約4割程度を占めると言われていますが、正社員に比べ劣悪な待遇となっています。これを是正するために「非正規社員の党」を作り、国会でこれらを是正する法律の制定を目指すことも考えられます。2,000万票は獲得できるはずです。その他、「原発廃止の党」も相当の票を獲得する可能性があります。
自民党や野党は、会社みたいな組織であり、サラリーマン政治家の集まりです。当選回数の少ない議員の発言力は無いに等しく、政策は年長者である党の実力者の考えに基づいて決まります。党の実力者には利権を守ろうとする団体や組織が付いており、生活者の要望など二の次です。また野党には労働組合が付いていますし、野党から自民党へ移る人が多いのを見れば分かるように、定見のない人が大部分です。従って、生活者の要望が今の自民党や野党で実現することはないと考えた方がいいです。やはり生活者が自らの要望を実現するためには、その要望を公約とする党を作り、その党の下に結集し、国会に多くの議員を送り込むしかありません。今後「1つの公約の党」が次々と作られ、いつか「1つの公約の党」の連立政権が生まれる日が来るかも知れません。尚、「1つの公約の党」は公約を実現したら解散します。そして次の「1つの公約の党」にバトンタッチします。こうして確実におかしな制度が改められ、世の中を良くすることができます。