JR北海道はJR東日本に統合を

JR北海道の2019年3月期の決算が発表されました。営業収益1,710億円、営業損失418億円、純損失179億円とのことです。これで繰越利益0となりました。営業損失に比べ純損失が239億円少なくなっているのは、経営安定化基金の運用益255億円などを計上したためです。経営安定化基金というのは、国鉄をJR5社に分割したとき、営業収入だけでは経営が成り立たないJR3社(北海道、九州、四国)が運用益で補うために国から与えられた運用用資金です。2019年3月末現在JR北海道には6,812億円計上されていますが、この低金利の中255億円の運用益(3.7%)は出せるはずがないので、評価差益の取り崩しを行っていると思われます。JR北海道は、分割当初から営業段階では200億円程度の赤字が予想され、それを資金運用益(4%程度)で穴埋めし、損益黒字の計画だったのではないでしょうか。

2019年3月の営業損失拡大の特殊要因としては、9月の台風被害や胆振地震の影響、札沼線廃止に伴う費用などを挙げていますが、根本的には人口減少、車による鉄道利用者の減少が原因です。

前年の決算が営業収入1,737億円、営業損失416億円、純損失87億円、前々期が営業収益1,727億円、営業損失391億円、純利益17億円だったのを見ると、通常ベースでも営業損失400億円台になっていると思われます。JR北海道は、このままでは存続困難として全路線の約半分(,1237km)に当たる10路線、13区間について廃止か周辺自治体の支援を得て存続かの検討を進めているということです。これで営業赤字を200億円程度に減らせば経営安定化基金の運用益と同基金の取り崩しで収支トントンに持って行けると考えているのでしょうが、それは甘いと思われます。現在の低金利を考えると運用益は1%(68億円)がせいぜいであり、運用益にたよるとしても営業赤字は68億円以下にする必要があります。また、今後の人口減少を考えると周辺自治体の支援も限界があります。周辺自治体の支援による存続は、廃止の先延ばしに過ぎず、自治体としても支援するより自治体でバスなどを運航した方が安く上がるはずです。ならば、経営安定化資金6,812億円が無傷の今のうちに、営業段階で黒字になるような事業構造にするしかありません。そうなると鉄道事業は、新幹線と、在来線では札幌-千歳空港などの札幌近郊線、札幌―旭川―富良野線、札幌―小樽線くらいに絞り込むしかないと思われます。あとはバスで代替です。現在の鉄道利用者数から見ると、これで十分なはずです。そうしないのは、経営安定化資金が未だ6,812億円あり、これを取り崩せば今のままでも15年以上潰れることはないという発想があるからです。

確かにその通りなのですが、北海道に将来に渡りできるだけ長い区間鉄道を残すためには、他の方法を選択する時期に来ていると思われます。それはJR東日本との経営統合です。もちろん今のままのJR北海道ではJR東日本が経営統合を受けるはずがありません。JR北海道は先ほど書いた路線だけを残す形に整理する必要がります。そうすれば6,812億円の経営安定化基金付きの経営統合なら、JR東日本にも魅力があります。JR東日本としては、豪華特急四季島を北海道に乗り入れることが可能となります。四季島の運航と経営安定化資金を考えると札幌―釧路間の鉄路を残すことも考えられてきます、首都圏およびインバウンド向けの観光開発も考えられます。このように北海道の鉄路は、JR東日本と統合した方が長い区間残る可能性が高まるし、北海道の開発も進む可能性が高いのです。

これが可能なのは、経営安定化基金が無傷な間しかありません。2,3年内の決断が望まれます。

尚、JR四国も同じような理由と方法でJR西日本に統合する必要があると思われます。そもそも国鉄は、JR5社ではなく、JR3社(JR東日本、JR東海、JR西日本)に分割すべきだったのです。