IT企業の株式評価の適正化が始まる
5月10日に米国のナスダック市場に上場したウーバー・テクノロジーズ(以下ウーバー)が今年の第一四半期決算を発表しました。売上高は27億6,000万ドル、純損益は10億1,000万ドルの赤字ということです。2018年通期では、売上高112億7千万ドル、営業損失30億3,300万ドルだったので、損益は更に悪化しているようです。この結果、公開株価45ドルに対して5月30日終値は39.80ドルと公開株価を約12%下回っています。公開時の時価総額は915億ドル(当時の円ドルレートで10兆2,000億円)でしたが、これが670億ドル(7兆2000億円)に減少しています。
ウーバーのビジネスモデルは、スマホを使い顧客から車の配車の依頼を受け、それを自営業の運転手に委託することが主ですから、労働集約型です。利益を増やそうとすれば、運賃を上げるか、委託料を下げるしかありません。運賃はタクシー会社などとの競合で決まりますので、そう上げられません。委託料も労働者保護の動きが強まっていることから、下げられません。むしろ今後上がると見た方がよいと思います。現在の赤字は先行投資部分が大きいとは思いますが、先行投資が止まったにしても、ウーバーの利益率は高くなりそうもありません。運賃の20~30%がウーバーの取り分となり、ウーバーの利益はこの中から費用を除いた部分となりますから、利益率は良くて10%もあればよい方であり、1桁になる可能性が高いと思います。そうなると売上高5兆円でも営業利益5,000億円以下となりますので、時価総額5兆円でも高いと思います。時価総額が今の10分の1になっても驚きません。
2019年3月末で米国の4大IT企業の時価総額を見ると日本円で100兆円に迫っています。マイクロソフト9,050億ドル、アップル8,950億ドル、アマゾン8,750億ドル、アルファベット(グーグル)8,170億ドルです。マイクロソフトでも営業利益率は当初の40%以上から20%を切るレベルとなっており、利益率は低下傾向にあります。これはITサービスが普及すれば当然至る結果です。このようにITサービスはそろそろ成熟期を過ぎて来ており、普通の産業化してきていると思われます。ITサービスの特徴は大規模な仲介機能であり、これが成熟化すると値下げ競争しかありません。ITサービスは値下げ競争の時代、儲からない時代に入ってきたように思われます。そうなると現在のIT企業の株式時価総額は過大であり、今後適切な水準に切り下がると思われます。