西川社長続投なら日産のガバナンス体制強化は嘘

日産の株主総会が6月25日に迫り、ルノーと日産、日産と機関投資家の間で駆け引きが活発となっています。

ルノーと日産の間では、日産が株主総会に提案している指名委員会等設置会社移行のための定款変更の決議案にルノーは棄権すると伝え、揺さぶりをかけています。これは6月7日付のスナール会長から西川社長に宛てた文書で伝えられたということであり、6月5日のルノーの取締役会で日産指名にかかる取締役がFCAとの統合案の採決に棄権を表明したためフランス政府指名の取締役が採決の延期を提案し、その結果翌6月6日FCAが統合案を撤回したことに対する腹いせとも考えられます。しかし、日産提案の指名委員会等設置会社移行は、日産の43%の株式を握るルノーの影響力の排除を狙ったものであり、ルノーとしては反対するのが当然なのです。本来なら当該議案が日産の取締役会に諮られた際にスナール会長、ドミニクCEOその他ルノー指名に懸かる取締役は反対すべきだったのです。それをせずに株主総会近くになって棄権の意志を伝えてきたことは、フランス政府の日産との統合意志の強さを知ったルノーのスナール会長とボエロCEOが態度を急変させたのかも知れません。フランス政府は、FCAとの統合より日産との統合が先と言う立場であり、これを遅らせることになる可能性が高い指名委員会等設置会社移行には当然反対となります。

6月14日の新聞報道によると、ルノー側は指名、報酬、監査の3つの委員会にスナール会長やボレロCEOなどルノー指名の取締役を参加させることで妥協するもようとのことですが、それはおかしいと思います。ルノーとしては、日産との統合の妨げとなり、ルノーの権限を弱める指名委員会等設置会社移行は否決すべきなのです。もしルノーが3委員会へスナール会長などの参加で妥協するとしたら、ルノーと日産はほぼ対等な関係であることを認めたこととなります。

日産と機関投資家の間の関係では、西川社長の取締役再任に米議決権行使助言会社大手2社が反対を推奨したということです。西川社長は、ゴーン逮捕理由となった有価証券報告書虚偽記載で有価証券報告書に責任者として署名していますし、ゴーン容疑者が本来貰うべきと考えていた報酬と実際に受け取った報酬の差額につき、取締役退任後に受け取ることを企図して作成した雇用契約書に署名していたことが明らかになっており、ゴーン容疑者の共犯となります。それが司法取引によりゴーンは起訴され、西川社長は起訴されないのは、法の公平性の観点から許されません。起訴されなくても西川社長の行為は取締役として背任行為であり、取締役解任が相当です。西川社長の取締役再任および社長続投案を決めた取締役は、今回のゴーン逮捕事件に責任がある人たちであり、西川社長と同じ穴のムジナです。このようなムジナが残る日産の新しいガバナンス体制が不健全なのは明確です。日産の株主は、少なくとも西川社長の取締役再任は否決し、株主の力でガバナンス体制の健全化を図る必要があると思います。