堺市長選挙は「NHKから国民を守る党」が勝敗を決めた
6月9日に大阪府堺市長選挙が行われました。大阪府知事・大阪市長選挙および大阪府・市議会選挙で大勝した維新系の候補と自民党系の候補の一騎打ちとして注目されました。
結果はというと、維新系の候補が137,862票を獲得し、123,771票の自民党系の候補を14,091票差で破り当選しました。大阪万博誘致成功という実績を背景に破竹の勢いの維新系候補に対し、自民党候補は維新候補が勝てば長い自治都市の歴史を持つ堺が維新の大阪都構想に加えられてしまうと訴えました。自民党候補の訴えは、前堺市長が自民党系候補として維新系候補を破り当選してきた主張と同じであり、結果は予断を許さなかったと思われます。
この堺市長選挙は、実質維新系候補と自民党候補の一揆打ちだったのは間違いありませんが、立候補者は3人でした。もう1人は新聞などでは諸派と表記されていましたが「NHKから国民を守る党」代表の立花孝氏でした。もちろん立花氏が当選することは100%考えられないことでした。しかし、堺市長選挙のもう一つの注目点は立花氏が、というより「NHKから国民を守る党」がどれだけの票を獲得するかということでした。
「NHKから国民を守る党」は4月の統一地方選挙で26議席を獲得し、一躍注目を集めました。地方議会の扱うテーマではないNHK受信料問題の解決を唯一の公約にする党であり、これまでなら当選者を出すなど考えられませんでした。それが、東京区議会や東京の周辺市議会を中心に26人の当選者を出したのですから、有権者の意識に何らかの大きな変化があることが伺われます。
しかし、この現象も東京およびその周辺が中心で、関西では尼崎市議会および西宮市議会で2議席を得ているだけで低調でした。「NHKから国民を守る党」は7月に予定される参議院選挙の全国区で当選者を出すことを狙っていますが、そのためには関西、とりわけ大阪府で多くの票を獲得することが必要となります。堺市長選挙は、党名をアピールする絶好の機会であり、同時に党名の浸透度を測る機会でもありました。同党の公約はただ一つNHK受信料制度の見直し(見たい人だけが払うスクランブル放送の実施)ですから、党名さえ浸透すれば相当の票数を獲得することは間違いないのです。何故なら、NHK受信料の未払い世帯は約900万世帯であり、その有権者数は約1,350万人(1世帯1.5人と仮定)となり、この人たちは確実に同党に投票すると予想されるからです。そして大阪府の不払い率は32.5%と全国2位(東京は30.3%で3位。ちなみにトップは沖縄県の49.0%)であり、東京に次ぐ大票田です。
堺市長選は、大阪都問題と堺の立場という重大な政治問題を含んであり、NHK受信料という月2,230円の問題を訴える同党は埋没する可能性もありました。しかし結果は、14,110票、有効投票数の5.1%を獲得しました。維新系候補と自民党系候補の票差は14,091票であり、もし立花氏が立候補しておらず、同氏の獲得票が自民党系候補に回っていたら、自民党候補が当選していたことになります。即ち、同党の獲得票は、市長選の結果を左右する存在になっていることを意味します。また、大阪都と堺の立場の問題よりも月2,230円のNHK受信料の問題が重要と考える市民が多数いるということを意味します。高所得者にとっては何でもない金額でも低所得者にとっては食費を削って払っているのが現実ですし、受信料不払いは、払わないのではなく払えないのが現実なのです。だから、受信料不払い者やしぶしぶ払っている人は、どんなに政治的に大きな争点があっても同党の候補者に投票するのは必然なのです。従って、今後の地方選挙や国政選挙で同党が躍進するのは間違いありません。
堺市長選挙はこのことを確信させる選挙であったと言えます。また同党の存在が大阪府内や関西の受信料不払い者や不満を持っている人に認識されるのに大きな効果があったと思われます。この意味で堺市長選挙の最大の勝者は「NHKから国民を守る党」と言えます。
尚、同党が躍進し、NHK受信料制度という岩盤制度が替れば、その他の不条理な制度を突き崩すきっかけとなります。NHK受信料には興味がなくても変えたい制度がある方は投票して損はないと思います。