文系亡国論、無から有は生まれない

日本はGNPでは世界3位と言いながら、1人当たりでは世界27位くらいであり、決して豊かな国ではなくなっています。今後高齢化と人口減少が進むことから、将来の見通しも明るくありません。1980年代は「ジャパン・アズ・NO1」という本も書かれ、将来はアメリカを抜く程豊かな国になるのではないかと思われたものでした。それが、当時勢いのあったソニーや松下電器、シャープ、東芝などの電機メーカーは韓国や中国のメーカーとの競争に敗れ、買収されるところも出る有様です。また海洋国家として世界1位の建造量を誇った造船も今ではいくつかの中堅メーカーが残るだけとなりました。その後伸びた半導体やパソコン、携帯電話も韓国や中国のメーカーにあっと言う間に抜き去られました。

これらの製造業がもたらした富が1980年代のバブルをもたらしたと思われます。急激に増えた富が不動産や株に流れ、巨大なバブルを作り上げたのです。そしてバブルの元になった富を作り出したのは、工学部を中心とした大学の理系出身者であり、巨大なバブルと作り出したのは、不動産や銀行、商社の社員の殆どを占めた文系出身者でした。バブル崩壊後日本は長い経済低迷期に入りますが、この原因はバブル期に華やかな文系の職場がもてはやされた結果、理系志望者が減り文系志望者が増えたからでした。同時に質的にも優秀な学生の文系シフトが進んだと考えられます。その結果、戦後日本の発展を担ったメーカーの地力が落ち、日本の産業を引っ張る新製品が生まれなくなりました。これがバブル崩壊後日本の低迷を長引かせた最大の原因と考えられます。そして、日本を少し元気にしたのがIT技術の発展でした。インターネットやスマホの爆発的利用に伴い、ITの仕事が増え、産業構造を少し変えました。しかし、旧来の大企業の事業構造を変えるところまでは行っておらず、未だ大企業の事業構造の転換は道半ばです。

そして2012年の安倍首相の就任で、思い切った金融緩和策が実施され、株価の高騰と低金利の影響で、お金が市中に流れ出し、好況感を生み出しました。この好況感は、大量のお金と低金利が生み出したもので、何か技術革新があったものではりません。技術レベルではITを除き旧来のままのように思えます。アベノミクスも7年目に突入し、ここにきて低金利が当たり前になり、損益計算上金利低下に伴う利益も出なくなってきました。その結果、低金利の有効期間切れも近づいているように思えます。

こう見てくると、日本の富を作り出したのはメーカーを中心とした理系出身者であり、彼らが生み出した富をさらに膨らませようとして逆に減らしてしまったのが文系出身者であることが分かります。多分文系出身者がいなければバブルも生まれなかったし、その後不況が長期に続くこともなかったのです。

やはり日本の場合、国に富をもたらすのはメーカーであり、理系出身者だと思います。文系出身者はその富のぶら下がりであり、ぶら下がりが増えすぎたばかりか、その富でハイリスクな運用を行い、結果富を減らしています。今のアベノミクスも文系出身者が考えた弥縫策であり、根本対策にはなっていません。根本対策として、技術革新のための科学技術の新興しかないと思われます。安倍政権はそれを怠ったため、次の世代に金融緩和の後始末と科学技術の新興に長い時間がかかる宿題を残すこととなりました。歴史を見れば、開戦を決めたのは文系の政治家であり、バブルを作り出すのはいつも文系出身者です。無から有は生まれません。文系出身者が国を亡ぼす、と言えるかも知れません。